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鬼蜘蛛の網の片隅から › 原子力発電 › 日本が原発推進という不合理で愚かな選択をしつづけた理由

2011年05月02日

日本が原発推進という不合理で愚かな選択をしつづけた理由

 先ほど、気になっていた「マル激トーク・オン・ディマンド」の小出さんの話を聞いた。以下から視聴できるので、連休で時間のある方は聞いていただきたい。

http://www.videonews.com/on-demand/521530/001858.php

 私がとりわけ関心を持ったのは、最後の方で語られている「なぜ日本は不合理な選択をしつづけたのか」という問題だ。

 小出さんによると、米国は1974年に原子力の夢から覚めたという。74年がピークで、それ以降は計画中のものはすべてキャンセル、建設中のものもキャンセルしたという。79年のスリーマイル島の事故でさらに減り、過去30年にわたって一基の新規立地もないそうだ。アメリカではすでに原子力産業は崩壊している。ヨーロッパも、77年か78年に原子力発電に見切りをつけたという。

 60年代は世界が原子力への夢を描いていたのだが、欧米では70年代にその危険性を認識し方向転換してきたのだ。

 では、なぜ日本は今に至るまで危険を顧みず原子力発電に突っ走ったのか? 小出さんの意見は以下のようなものだ。

 日本の歴史性にあるのではないか。お上が決めたことに従うという国民性があり、国家が原子力をやると言い続けた。また、原子力産業の儲けということもある。昨年の秋のNHKの番組で言っていたことだが、日本は平和利用といいながら核兵器をつくろうとした。核兵器を持っていることは世界を支配するための条件だからだ。そのことは政府の文書にも書かれている。

 私は小出さんの意見はもっともだと思うが、それだけではないとも思う。メディアの問題だ。欧米のマスコミは政府や大企業の不祥事を暴くのが使命となっているが、日本はまったく違う。日本のマスコミは政府の発表を垂れ流しにし、大企業はマスコミに広告を出稿することで批判封じをする。国民には原発の事故も知らされなければ「原発は危険」という事実も知らせなかったのだ。むしろマスコミは「安全」ばかりをアピールしてきた。そして各地で起こされた原発裁判でも裁判所は国の肩を持った。政府と原発産業、マスコミが手を組み、裁判所まで加担しているから「原子力ムラ」の強固な壁は崩せず、国民はころりと騙されたのだ。

 欧米が原発の危険を認識して原子力産業から手を引いていったのに、日本人だけが「原子力は危険」という世界の常識の蚊帳の外に置かれていた。もし、マスコミが原発の危険性や核兵器への転用目的について報じていたなら、政府もこれほどまで原発をゴリ押しできなかったのではなかろうか。日本のマスコミは、権力の監視ということにおいて全くというほど機能していない。そのことはずっと感じてきたが、福島の事故を目の当たりにしても姿勢の変わらないマスコミには心底情けないと思った。

 残念ながら福島の原発事故についてインターネットで情報収集している人はそれほど多くはない。だから、テレビしか見ない日本人は今も小出さんの名前すら知らない人が大半なのだろう。

 小出さんは、最後にこんなことを言っていた。

 1970年に原子力をやめさせようと思った。いつか事故が起きると思っていたが、とうとう起きてしまった。言葉がない。こういう事態なのに、まだ原子力発電が動いている。今、即刻、全部やめても電気は足りる。ただ、そんなことより、原子力はやってはいけない。日本人がそう思えないことに絶望感を持っている。

 これについては私もまったく同感だ。原子力発電所が未曾有の大事故を起こし、今も収束できずに放射能が降り注いでいるというのに、不便な生活は嫌だといって脱原発を唱えない日本人が多いのだから神経を疑う。こういう人たちは、福島の事故がどれほど深刻なものか理解していないのだろうし、アメリカですら原子力産業から手を引いていることを知らないのだろう。井の中の蛙だ。

 そして、私は電気を使って利便性を追求することに心の貧しさを感じてしまう。電化製品に頼って手も足も頭も使わない生活が楽しいのか?豊かなのか?と。

 以下は「こるとれーんtone」さんのブログで見つけた東電ソングだ。




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Posted by 松田まゆみ at 23:00│Comments(6)原子力発電
この記事へのコメント
> ……マスコミには心底情けないと思った。

 でもね。記者だって死ぬんだよ。それなのにほんとのこと書いて原発停めようと思わないの? 彼らがいちばん知ってるはずなんだよ。すくなくともアホな国民よりは……
 まったく理解に苦しむ!
 小出先生の気持ち、痛いほど分かる。まともな神経なら気が狂うよ。
 原発を推進する民主主義よりは原発を停める独裁政治のほうがずっといいと俺は思う。
 こうなったらテロリズムしかないんだよね。
Posted by 本間康二 at 2011年05月03日 01:43
マス塵は福島第一原発から50km以内には絶対に近づかずに安全だなどと言っているのですから本当に悪質です。
いざという時には誰よりも早くマス塵は逃げてしまいます何しろ本当は危険だという情報をマス塵は一般人の誰よりも確実に持っているのですから。
防衛安保という観点からも日本のように狭い国土では核兵器の落とし合いでは絶対に勝てない訳で原発でプルトニウム取得など全く無意味でした。
核廃絶の方向に持っていった方が戦略的にも有利なのです。
今話題の即発臨界ですがこの小出先生の資料からも意外と簡単に起きてしまう事がわかります。
「事実は単純である。1999 年 9 月 30 日、午前 10:35、高速増殖炉実験炉「常陽」用の濃縮度 18.8% のウランを精製していた途中で、臨界量以上の硝酸ウランが沈殿槽と呼ばれる容器に注がれたた め、臨界となった。即発臨界で発生した中性子とガンマ線によって、3人の作業員が急性放射線 症状を呈し、うち1人は、12 月 21 日に亡くなった。」
www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/jco/satellite/kid0126.pdf
中鬼さんの「3号機の爆発は核爆発」:クリス・バスビー教授インタビュー和訳もわかりやすいです。
onihutari.blog60.fc2.com/blog-entry-45.html
Posted by 透明 at 2011年05月03日 06:29
 たった一つ方法がありました!
 海外に訴えるんです。逃げ場のない日本の日本人に「逃げろ」と叫ぶ愚を理解させ、マスコミ停止で民意の半分以上死んでいる情況(実質内戦、無意識の罪=民族虐殺)を訴え、外から【いますぐ原発止めろ!】の声を日本政府と日本人に恫喝してもらうことを切に、切に訴えるのですよ。

 ——このままではわたしたち反原発派・脱原発派市民は日本と共に滅亡してしまう!

と。
 俺はルワンダ虐殺を外から止められなかったと嘆く人々をいまでも嗤う。民族自決の原則を曲げたら、これまでアメリカが侵してきた数多の罪まで免罪することにもなるし、正義の物差しは一つに非ずという事実からも厳しい原則だと思う。
 しかし、原発はちがう。
 このまま垂れ流せば世界の破滅にもつながりかねない。いや、現に海は侵され、大気は侵されている。
 世界に向けて、【中から変えられない以上、外圧で日本の原発を止めてくれ】という訴えは理不尽でもお門違いでもないはずです。
 アムネスティにだって訴えられるはず。
 国連はダメだよ(笑)。
 どうですか。俺は一貫してブレてないでしょ。やはり海外の奴はバカですよ。
 これしかない!
 さあ、いまから海外に向けてこのメッセージを発信しましょうよ。もう、たぶん残りの時間はないんですから……
Posted by 本間康二 at 2011年05月03日 11:03
透明様

「平和利用」と言いながら核兵器に材料を大量につくり保持してきたのですから、とんでもない国民への裏切りです。あの大量の核のゴミのことを考えると、暗澹たる気持ちになります。中鬼さんの記事は昨日の記事「3号機の爆発の真実は?」にリンクさせました。
Posted by 松田まゆみ at 2011年05月04日 06:46
本間様

たぶん、黙っていても日本は海外から強烈に批判されると私は思います。とにかく海へ大気へと大量の放射能を垂れ流していて世界的な汚染を引き起こしているのですから。それに、外国人の記者はもう日本の合同記者会見で情報を得ようと思ってはいないと思います。日本国民より事態の深刻さを知っているのではないでしょうか。
Posted by 松田まゆみ at 2011年05月04日 06:54
> 黙っていても日本は海外から強烈に批判されると私は思います。

 そうでした。
m(_ _)m
 これをコピーさせてください。さっき、自分のブログで立てた記事です。

[天木直人が寝言をつぶやいている。
 「小沢一郎が原発推進者だった」としても、彼は「その事に対して言い訳をする必要はない」と断言する。
 某紙に載った東大教授の文を引きあいに、「あの戦争を『許容していた』という反省から、『俘虜記』、『レイテ戦記』などの作品で反戦を訴え続けた作家大岡昇平の例を引用」した筆者の、「私は原発を許していた。温暖化の切り札として、インフラの海外輸出の柱として、そしてオール電化の安全性として、原発是認の声は説得力があると思っていた/その私が、今度の事故で目覚めた。敗戦の総括が自力でできなかった日本ならば、せめて原発事故の誤りを繰り返してはならない、と/強烈な反省と覚醒である」だから許せと。
 ふざけるな。
 その理屈がとおるなら、どんな罪でも裁かれる者など誰もいないことになる。
 小沢をはじめ、自民党や原発利権にむらがって「原発の安全」を喧伝、マスコミまでも飼い慣らしてきた者たちの罪は、多くのブログ主が怒りを込めて指摘しているように、A級戦犯(俺は「永久戦犯」というが!)の名に値する重罪だ。
 頭をまるめて出直すにしても、これまで東電その他から得た利益を全部吐き出し、震災復興に寄付するくらいの詫びを入れても償えない罪だ。それを免罪しろとはどの口をもっていえることか。
 はっきりいえばいい。「この国を救うのは小沢しかいないのだ」という小沢信者ぶりを告白すればいいだけだ。
 だが、その小沢に未必の故意の容疑濃厚ということを忘れるな。彼は、まだ、その告白も弁解もしていないのだ。]

 こういう擁護論も、こんごザクザクでてくると思いますよ。どんな不幸も忘れやすい国民性から。
 いまの日本の不幸は

  ——政府がない。
  ——マスコミがない。
  ——労組もない。そして……
  ——真の政治家がただの一人もいない。

 正に四重苦なのです。
Posted by 本間康二 at 2011年05月04日 13:39
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