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鬼蜘蛛の網の片隅から › 原子力発電 › 原発作業員ハッピーさんの疑問

2011年08月26日

原発作業員ハッピーさんの疑問

 原発作業員のハッピー(Happy20790)さんのツイッターは、あちこちで紹介されてかなり知られているようだが、一部では東電の工作員ではないかという疑惑が持たれている。私がハッピーさんのつぶやきを知ったのは6月頃のことだったと思うが、それ以降、ハッピーさんのつぶやきはしばしばチェックしていた。

 私はいわゆる陰謀論については慎重であるべきだと思っている。地球温暖化説が原発推進派による陰謀だとか、9.11がアメリカ政府の自作自演だとかいう説があるが、基本的には信じていない。しかし、もちろんこの世に陰謀がないとも思っていない。

 実際、共同出版・自費出版問題においても、新風舎の倒産をめぐりライバル会社の関与が強く疑われたのだが、マスコミはこれをほとんど見抜けなかったのだ。私のブログ記事の削除要請問題においても悪質自費出版業者が関与していた可能性がきわめて高い。共同出版の批判を書いている私のブログには、多くの不可解なコメントがあった。評価しておだてておきながら、他方でこき下ろすような人物もいた。ほぼまちがいなく私を騙そうとして陰謀的なことが行われていたのだと思う。

 こうした経験もあるので、ハッピーさんのツイッターははじめからあまり信用していなかったというのが本音だ。私がときどき紹介しているカレイドスコープでも、6月にハッピーさんのつぶやきを紹介している。ハッピーさんのつぶやきについてあまり知らない方は、以下の記事をお読みいただきたい。

4号機建屋についてのハッピーさんの「つぶやき」

 このブログの著者は、ハッピーさんのことを信じて疑っていないようだ。この方は福島原発に関してはかなり賛同できる記事を書いているが、この記事を読んでも私のハッピーさんに対する疑惑は揺るがなかった。ハッピーさんのつぶやきには、直感で不自然だと感じさせるものがあるのだが、もちろんそんな感覚的な理由だけではない。

 ハッピーさんは3月の事故当時も福島原発で働いていて、作業現場にも頻繁に出向いて作業に関わっているらしい。しかし、それが事実ならいくら気をつけてももうとっくに被曝限度を超えているとしか思えない。福島では今でも3キロ圏内の住民の一時帰宅すら安易に許されない状況なのだ。それほど原発周辺は線量が高い。なのに、ハッピーさんはホールボディカウンターを受けたときも、たいした被曝量ではないと言っていた。あれほどの高線量のところに毎日のように出入りしているのに、にわかに信じがたい。

 3月からずっと福一で作業をしていることからも、事故処理のために集められた一般の作業員ではない。ツイッターの内容から休みの日もだいたい把握できる。あれだけの情報を書いているのだから、東電はハッピー氏を容易に特定できるだろう。ならば東電や政府の批判も適度に入れている作業員のツイッターを放置しておくのはどう考えても不可解だ。

 たとえば、先日も紹介した以下のサイトで作業員へのインタビューが掲載されているが、作業員はメディアと接触することを東電から固く禁じられているのだ。作業員のツイッターなど許されるはずもなかろう。

フクシマ作業員への匿名インタビュー(・・・just wondering)

 また、この記事の作業員の話しから、きわめて過酷な現場の実態が浮かびあがってくる。まるで地獄のような作業現場だ。その過酷さや恐ろしさは、ハッピー氏のつぶやいている現場の様子からはちょっと想像がつかない。ハッピー氏のつぶやきには、どちらかというと「過酷な中でみんな頑張っている」「工程表どおりにはいかないけれど、それでも何とかなりそうだ」という、どちらかといえば希望的な雰囲気が漂っている。

 カメラマンの小原一真さんがフクシマ第一原発に潜入して取材をしており、その様子を小原さんがご自身のホームページで報告している。

http://kazumaobara.com/2011/08/flontline-in-fukushima.html

 ここでも、東電が取材を禁止し情報統制を行っていると書かれている。免震棟の中でさえ、毎時16マイクロシーベルトとのこと。小原さんは防護マスクをつけて30分で後頭部が痛み、1時間で痛みが限界に達したという。個人差があるとは言え、相当厳しい労働環境だ。2回の休憩をはさんだ3時間の労働で、疲労困憊になっていることが伺える。しかも、排気筒付近で1万ミリシーベルトが検出されたときも、作業員には事実が知らされていなかったという。これが現場の実態だ。

 ハッピーさんはこのような方たちと同じ作業をしているわけではないだろうが、彼のつぶやきは、上記の匿名インタビューや小原さんの報道から伝わってくる実態とかなり乖離しているとしか思えない。同じ現場で働く人でありながら、あまりにも感覚的に落差が大きいのだ。

 そして、私がもっともハッピーさんに疑惑を持ったのは、地割れからの水蒸気の件だ。ハッピーさんは、8月2日にツイッターで「敷地内、あちこち地割れして黒い水蒸気があがってると誰かがつぶやいてますが、そんな状況確認できてますか?」と質問され、以下のように答えている。

http://twitter.com/#!/Happy20790/status/98362903719198720
地割れしてるとこはあるけど、そんなの見たことないよ。デマですね

 ツイッターでの「地割れから水蒸気」という情報に対し、デマと断言している。

 その後、8月15日には木下黄太さんが同じような情報をブログに書いた。以下の記事だ。

福島第一原発敷地内で「地割れ、水蒸気が噴出している」情報。再爆発の懸念も」

 情報源は当然のことながら公開していないが、ツイッターとは別のようだ。その後、ハッピーさんは木下さんのブログ記事についてまた質問をされた。

http://twitter.com/#!/kinori1/status/103486331635769344
@Happy20790 いつも厳しい作業をして下さり、ありがとうございます。この記事http://blog.goo.ne.jp/nagaikenji20070927/e/26ea73eff5b8b8d698d21dc57d1b10ba の「水蒸気が噴出する地割れ」や「六ヶ所ある10Sv/hの場所」について現場で見聞きしたことはありますでしょうか?

 これに対するハッピーさんの答えは以下。

http://twitter.com/#!/Happy20790/status/103489620678934528
@kinori1 水蒸気の事は前にも答えましたが、オイラは見たことも聞いた事もないです。10Sv/h以上の場所6ヶ所は事実だと思います。ただそれは今の所、計測できる場所のみで実際はもっと他の場所もあると思います。

 ハッピーさんは22日にさらに以下のつぶやきをしている。

http://twitter.com/#!/Happy20790/status/105600103376621568
ただいまっ(^O^)今日は構内をグルグルパトロールしてきたよ。フォロワーさんが心配してた共用プール廻りの地面も見てきたけどやっぱ水蒸気なんてなかったよ。1号機~4号機廻りも車で廻ってみたけどなかった。あと今まで行ってなかった5,6号機廻りと更に北側に行ってきた。

 とにかく地割れからの水蒸気のことは頑なに否定している。

 この水蒸気の件についてはクリス・バズビー氏も語っており、たぶん間違いないだろう。昨日の記事にも書いたが、バズビー氏はきわめて深刻な事態だと言っている。それなのに、現場をよく知るはずのハッピーさんが3度にわたって否定する不可解さ・・・。

 ここでピンときたのは、この件は東電がずっと隠しておきたいことに違いないだろうということだ。バズビー氏も、この件は完全に無視されてまったく語られないと言っている。とにかく東電も政府も隠したいことなのだ。だって、ものすごく深刻な事態なのに手のつけようがないのだから。

 ハッピー氏が工作員ではないかという疑惑が流れている中で、ハッピー氏のツイートを何回か紹介してきた大沼安史さんは、昨日とうとうこんな記事を書いた。

「ハッピーは東京電力職員による福島事故広報用(捏造隠蔽用)アカウントです」……嘘だと言ってよ、「ハッピーさん!」

 さて、この日のハッピーさんの反応は早かった。23日と24日はつぶやいていなかったが、まるで大沼さんの記事に呼応するかのように、以下のつぶやきがあった。

http://twitter.com/#!/Happy20790/status/106640457177640960
ただいまっ(^O^)ちょっと久しぶりな気が… 。って開いてみたらなんかオイラのTL凄いことになってるでし(*_*)東海アマだかバカだかわかんないけど煽動してなんなんだ(-"-;)東電と同じくらいバカでし(-_-#)工作員って…まだ言ってるし、自分の目でみて確かめりゃいいのに。

 このつぶやきを読んで直感したのは、ハッピーさんは大沼さんのブログをチェックしている人ではなかろうか、ということだ。つまり、福島原発についてのネット上の情報をこまめにチェックしている人にしか私には感じられなかった。それに、昨日のハッピーさんのつぶやきからは自分の正当化に必死になっている雰囲気が漂ってくる。

 ということで、これはあくまでも私の個人的推測に過ぎないのだが、ハッピーさんはやはり東電の関係者か、関係者から情報を得ている人物が書いている可能性が高いというのが私の見解だ。しかも、過酷な原発作業員が、ツイッターの名前やユーザー名に「Happy」なんてつける感覚が私には分からない。嘘と隠蔽を続けてきた東電のことだから、こういうことをしても全く不思議ではない。まあ、そうだとして、どうということもないのだが(いやいや、多くの人がハッピーさんの発言を広めているならそんなこともないか・・・)。もしハッピーさんの矛盾や疑惑がネット上に噴き出して不都合な状態になったときには「線量が限界になったので福一で働けなくなった」などといって、消えるのではなかろうかと私は密かに思っている。

 ハッピーさんを信じるか信じないかはもちろん個人の判断だ。しかし東電や政府が情報隠蔽に必死になっているのだから、発信者が特定できず疑問の持たれる情報に関しては慎重になる必要がある。このような情報発信に対しては鵜呑みにするのは避けるべきだ。

【2012年8月31日追記】
最近の情報からハッピーさんが原発作業員であることがほぼ間違いないと思われるため、以下の記事を書きました。

原発作業員ハッピーさんについての訂正とお詫び


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Posted by 松田まゆみ at 17:19│Comments(3)原子力発電
この記事へのコメント
原発作業員ハッピーさん、耳にしてましたがまつださんのおっしゃる通り
国民の心配はている部分にオブラートを被せる工作員のように取れました。

共同出版・自費出版問題では不可解なコメントで混乱を狙う
輩がいましたね 
国家と東電は幼稚な作戦考えてるくらいなら
本音で痴奇ぶりを曝け出して 放射能進行大国日本を食い止められるか
はっきりやることやって貰いたいです。

世界から見放される日本を作り出した東電が
どうして存在してるんでしょうね
Posted by こるとれーんtone at 2011年08月27日 08:19
こるとれーんtone様

もちろん断定はできませんが、作業員がこんなに内部的なことを書き続けられるということ自体、どう考えても不自然であり不可解です。

政府は原発事故のあとに東電を倒産させないようにしてしまいましたが、そういう姿勢がウソや隠ぺい、情報操作を助長させることにつながります。共謀ですね。
Posted by 松田まゆみ at 2011年08月28日 11:52
私は作業員だけど長期間コメントしてるんですがね。
ネット上のあちこちに作業員がいるように身分を隠してる人もいる。
ただ、私とハッピーさんが明らかに現場とかけ離れた噂を否定し、その噂を信じている人に工作員と呼ばれているだけ。
Posted by TSさん at 2011年08月30日 17:56
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原発作業員ハッピーさんの疑問
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