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鬼蜘蛛の網の片隅から › 政治・社会 › 「もったいない」という感覚をなくした日本人

2013年05月17日

「もったいない」という感覚をなくした日本人

 先週(5月10日発行)の週刊金曜日に、「満腹の情景 食べられるゴミ」というタイトルで、廃棄される大量の食品のことが書かれていた。

 コンビニでは賞味期限が切れただけでお弁当などを廃棄してしまうというのはよく聞くが、コンビニだけが食べられるものを捨てているわけではない。消費期限までまだ3、4日あるようなパック入り豆腐、パンや麺類などがトラックに山積みで廃棄されるというのだから、唖然とする。

 この記事によると、日本では年間1800万トンの食品廃棄物が排出されており、そのうちの500万から800万トンが食品ロスとのこと。昨年の米の生産量が852万トンだというのだから、それに近い量だ。

 賞味期限や消費期限切れはもちろんのこと、期間限定商品の売れ残り、イベントでの試食品、へこんだ缶詰、規格外農産物、賞味期限の印刷ミスなども食品ロスとして廃棄されるそうだ。そのうち賞味期限によるロスは6割を超えるとのこと。

 というのも日本では、製造日から賞味期限の三分の一までを小売店の納品期限、三分の二までを消費者への販売期限とする、という「三分の一ルール」が暗黙の了解としてあるらしい。これを超えてしまうと廃棄するのだという。缶詰や瓶詰のように賞味期限の長い商品で「期限切れ」までかなり余裕がある商品でも、この「三分の一ルール」を超えてしまうと捨てられることになるというのだから、信じがたい。

 しかも、家畜の餌などとしてリサイクルされるものはごく一部で、大半は焼却や埋め立て処分されるそうだ。食べるために作られた食品が、傷んでもいないのにそのままゴミとなっているとは何とおぞましきことか。日本人はご飯粒ひとつさえ残さずに食べるよう躾けられてきたのではなかろうか。その一方で賞味期限、消費期限という日付があるが故に食べられる物を捨ててしまうとは、いったい日本人はいつからこれほどまで感覚が狂ってしまったのか? なんだか頭がくらくらしてくる。

 そう言えば、「冷蔵庫に期限切れの食品があると、娘がみんな捨ててしまう」と言っていた知人がいた。若い世代では、そういう感覚の人がたぶん増えているのだろう。

 食品に賞味期限や消費期限が記載されるようになったのがいつ頃からだったのかよく覚えていないが、私はもちろん賞味期限などは単なる目安としか見ていない。指定された方法で保存していれば、この期間内ならおいしく食べられるという目安だ。多少期限を過ぎていても普通は問題ない。

 傷みやすい豆腐なども、残ったら茹でて水につけて保存すればしばらくはもつ。一度火を通すことで食品を長持ちさせることは多くの人がやっているだろう。納豆などは冷凍保存もできる。家庭ではちょっと気をつけていれば、食品を捨てることはほとんどないだろう。

 だいたい、賞味期限などというものが表示されていない頃は、見た目、匂い、味などで食べられるかどうかチェックしていたし、今だってそうやって見分けることも多い。うっかりして傷んでしまった物ならともかく、食べられる物を捨ててしまうということなど考えられない。それが戦争を体験した親を持つ私たちの世代の感覚ではなかろうか。

 賞味期限や消費期限を表示するようになったがために大量の食品ロスが生まれるようになったのであれば、なんという災いか。もはや「もったいない」などという感覚はないに等しい。なぜ、期限が近づいた商品を割引して売る、という方法をとらないのだろう。

 商品がなかなか回転しない地方の小さな小売店などでは、期限ぎりぎりどころか期限切れの商品を見かけることすら珍しくない。一昔前は、そんな店がどこにでもあったのではなかろうか。商店が大型化し、あらゆる食品に賞味期限が印字されるようになるとともに、私たちはどこか感覚が狂ってきたのではないか。

 ところで、不思議に思うのは調味料の保存法だ。最近は醤油や味噌は無添加のものを購入しているのだが、開封前でも「要冷蔵」とラベルに書かれている。醤油や味噌など冷蔵庫がない時代からあった調味料だし、昔はもちろん保存料など使っていなかっただろう。昔からこれらの調味料は常温保存のはずだ。なのに、なぜ無添加という理由で開封前から冷蔵保存しなければならないのか、私は不思議でならない。これも賞味期限・消費期限の影響なのではなかろうか。

 貧困で十分な食事も摂れない人がいるというのに、その一方で大量の食品が廃棄されている。山のように大量の食品を捨てておきながら、放射能汚染された食品が「基準値以下」だとして全国に流通している。不可解を通り越して狂っている。



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Posted by 松田まゆみ at 22:13│Comments(0)政治・社会
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