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2013年11月19日
御用学者考-江守正多さんは御用学者か
ツイッターで地球温暖化に関わるやりとりをする中で、江守正多さんが原発反対を言わないから御用学者というような主張をする人がいた。そこで、いわゆる御用学者について考えてみたい。
御用学者とは「はてなキーワード」によると、「おもに権力者・権力側に迎合し、調査結果などを権力者ないし依頼者に都合の良い方向に導き出す学者。省庁の審議会に招かれその省庁の進める方針に従った意見を述べる、等々、御用学者の活躍の幅は広い」と書かれている。では、具体的にはどうだろう。
私は動植物に関心があり自然保護にも関わっているが、もちろん環境問題に関しても御用学者がいる。自然破壊の主たるものはダムや道路工事など大型公共事業による開発行為だ。御用学者と言われる人たちは、そうした公共事業の事業者が設置する審議会、検討会、委員会などの委員となり自然環境への影響について意見を述べる。もちろん彼らは自然破壊を安易に是認はしない。しかし、たとえば希少植物があれば移植をしなさいとか、希少猛禽類が生息していれば繁殖期を避けて工事をしなさいなどと条件をつけて結果として事業にゴーサインを出すのである。
このような事業者が設置する委員会の委員になる人がすべて御用学者というわけではない。時には事業に反対する意見を言う研究者もいる。しかし、そのような人が委員として再任されることはない。
では、こうした御用学者の個々の研究が捏造や恣意的操作をしているのかといえばそうではない。環境破壊を伴う事業では環境アセスメントが行われるが、この調査をするのは研究者ではなくコンサルタント会社(アセス会社)である。そしてコンサルタント会社こそデータの恣意的操作などを行って事業者に都合のよい報告書を出すことをしばしば行う。御用学者はそれを見逃すのである。
御用学者と言われる人たちの中には、環境保全を謳う団体に関わっていることすらある。建前は環境保全を口にしてはいても、また自分でデータの操作などはしなくても、行政の設置する委員会等で行政の意向を汲んだ発言をするのだ。
原発の敷地にある活断層の判断に関わって注目された研究者として渡辺満久さんがいる。彼は日本では複数の原発敷地内に活断層があると指摘している。しかし、彼は原発には肯定的な立場だ。原子力は使ってもいい、使うべきだ、という立場でありながら、活断層があるようなところに原発を建てるべきではないと主張している。
「原発と活断層~その実態を聞く」活断層の専門家・東洋大学教授渡辺満久氏(みんな楽しくHappyがいい)
彼は決して反原発ではない。しかし、だからといって彼が研究者として間違ったことを言っているとか、多くの地質の研究者とは異なる見解を独自に主張していると言う人は聞いたことがない。脱原発派の人で渡辺さんが御用学者だという人はいるだろうか?
活断層問題で御用学者と言われるのは、明らかに電力会社の側に立ち、活断層ではないと主張するような研究者だ。
福島の原発事故以前から反原発を唱えている物理学者として槌田敦さんがいる。たしかに彼は権力者におもねるようなことはなく御用学者の要素はまったくない。しかし、槌田氏の主張する「気温の上昇が原因で、二酸化炭素の増加はその結果」という主張には多くの人が疑義を呈している。
つまり、槌田氏の言っていることは数年の時間スケールにおける気温と二酸化炭素の相関関係であり、長期的に見れば二酸化炭素の増加が気温の上昇に先だっているという主張だ。反原発を主張する人の見解が必ずしも正しいとは言い切れない。
以上のように、環境やエネルギー等の政策に対する研究者個人の見解と、その研究者が御用学者であるか否かは全く関係がないのである。
また、研究費が国から出ているから御用学者だという見方もあるようだ。しかし、そんなことを言えば国立大学の教員や国立の研究機関に所属する研究者はみな御用学者ということになってしまう。しかし、実際にはそんなことはない。確かに国から研究費を得ていれば国の意向に反する研究はしにくいという事情はあるだろう。しかし権力者と迎合しない研究者も間違いなくいる。また、データの操作や捏造までする研究者は例外的な存在に過ぎないだろう。それがバレたなら研究者生命に関わるのだから。
こういった事実にも関わらず、地球温暖化問題に限っては、原発に反対している研究者は御用学者ではないが脱原発をはっきり言わない人は御用学者だと思い込んでいる人が多いように見える。
少なくとも江守正多さんに関して、私は御用学者といえる根拠を見出すことはできない。
地球温暖化はたしかに原発推進派に有利に働く。しかし、地球温暖化が事実であろうとなかろうと、原発推進派は原発の再稼働に向けて邁進するに違いない。なぜなら、原発の稼働そのものが利権を生みだすのだから。原子力の専門家とてすべてが御用学者になるわけではなく、原発の危険性を唱える人たちは何人もいる。原発推進のためにわざわざ世界の気象学者を御用学者に仕立てて地球温暖化を捏造しているとはとても思えないし、そんなことは不可能だろう。
御用学者とは「はてなキーワード」によると、「おもに権力者・権力側に迎合し、調査結果などを権力者ないし依頼者に都合の良い方向に導き出す学者。省庁の審議会に招かれその省庁の進める方針に従った意見を述べる、等々、御用学者の活躍の幅は広い」と書かれている。では、具体的にはどうだろう。
私は動植物に関心があり自然保護にも関わっているが、もちろん環境問題に関しても御用学者がいる。自然破壊の主たるものはダムや道路工事など大型公共事業による開発行為だ。御用学者と言われる人たちは、そうした公共事業の事業者が設置する審議会、検討会、委員会などの委員となり自然環境への影響について意見を述べる。もちろん彼らは自然破壊を安易に是認はしない。しかし、たとえば希少植物があれば移植をしなさいとか、希少猛禽類が生息していれば繁殖期を避けて工事をしなさいなどと条件をつけて結果として事業にゴーサインを出すのである。
このような事業者が設置する委員会の委員になる人がすべて御用学者というわけではない。時には事業に反対する意見を言う研究者もいる。しかし、そのような人が委員として再任されることはない。
では、こうした御用学者の個々の研究が捏造や恣意的操作をしているのかといえばそうではない。環境破壊を伴う事業では環境アセスメントが行われるが、この調査をするのは研究者ではなくコンサルタント会社(アセス会社)である。そしてコンサルタント会社こそデータの恣意的操作などを行って事業者に都合のよい報告書を出すことをしばしば行う。御用学者はそれを見逃すのである。
御用学者と言われる人たちの中には、環境保全を謳う団体に関わっていることすらある。建前は環境保全を口にしてはいても、また自分でデータの操作などはしなくても、行政の設置する委員会等で行政の意向を汲んだ発言をするのだ。
原発の敷地にある活断層の判断に関わって注目された研究者として渡辺満久さんがいる。彼は日本では複数の原発敷地内に活断層があると指摘している。しかし、彼は原発には肯定的な立場だ。原子力は使ってもいい、使うべきだ、という立場でありながら、活断層があるようなところに原発を建てるべきではないと主張している。
「原発と活断層~その実態を聞く」活断層の専門家・東洋大学教授渡辺満久氏(みんな楽しくHappyがいい)
彼は決して反原発ではない。しかし、だからといって彼が研究者として間違ったことを言っているとか、多くの地質の研究者とは異なる見解を独自に主張していると言う人は聞いたことがない。脱原発派の人で渡辺さんが御用学者だという人はいるだろうか?
活断層問題で御用学者と言われるのは、明らかに電力会社の側に立ち、活断層ではないと主張するような研究者だ。
福島の原発事故以前から反原発を唱えている物理学者として槌田敦さんがいる。たしかに彼は権力者におもねるようなことはなく御用学者の要素はまったくない。しかし、槌田氏の主張する「気温の上昇が原因で、二酸化炭素の増加はその結果」という主張には多くの人が疑義を呈している。
つまり、槌田氏の言っていることは数年の時間スケールにおける気温と二酸化炭素の相関関係であり、長期的に見れば二酸化炭素の増加が気温の上昇に先だっているという主張だ。反原発を主張する人の見解が必ずしも正しいとは言い切れない。
以上のように、環境やエネルギー等の政策に対する研究者個人の見解と、その研究者が御用学者であるか否かは全く関係がないのである。
また、研究費が国から出ているから御用学者だという見方もあるようだ。しかし、そんなことを言えば国立大学の教員や国立の研究機関に所属する研究者はみな御用学者ということになってしまう。しかし、実際にはそんなことはない。確かに国から研究費を得ていれば国の意向に反する研究はしにくいという事情はあるだろう。しかし権力者と迎合しない研究者も間違いなくいる。また、データの操作や捏造までする研究者は例外的な存在に過ぎないだろう。それがバレたなら研究者生命に関わるのだから。
こういった事実にも関わらず、地球温暖化問題に限っては、原発に反対している研究者は御用学者ではないが脱原発をはっきり言わない人は御用学者だと思い込んでいる人が多いように見える。
少なくとも江守正多さんに関して、私は御用学者といえる根拠を見出すことはできない。
地球温暖化はたしかに原発推進派に有利に働く。しかし、地球温暖化が事実であろうとなかろうと、原発推進派は原発の再稼働に向けて邁進するに違いない。なぜなら、原発の稼働そのものが利権を生みだすのだから。原子力の専門家とてすべてが御用学者になるわけではなく、原発の危険性を唱える人たちは何人もいる。原発推進のためにわざわざ世界の気象学者を御用学者に仕立てて地球温暖化を捏造しているとはとても思えないし、そんなことは不可能だろう。
Posted by 松田まゆみ at 23:04│Comments(2)
│原子力発電
この記事へのコメント
この問題が難しい理由を考えてみました。
1.現状、温暖化が治(おさ)まっている。
2.危機的派の計算式が、以前は間違っていた。
例の大地と高度別の扱いをしなかった。
3.確かに、温暖化ビジネスには、陰謀らしき
悪質な「お金のやりとり」があったが、暴かれ
失脚した。
所で、日本の原発の日本領海12海里(22.2km)までの
暖め効果を計算したこと有りますか?
多分、驚くと思います。日本の全エネルギーの??%と
計算すると、いやー驚きます。 これは、マリさんに一票
所で、これをどう解釈すれば良いのですか?
「 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131121-00000974-bengocom-soci 」
1.現状、温暖化が治(おさ)まっている。
2.危機的派の計算式が、以前は間違っていた。
例の大地と高度別の扱いをしなかった。
3.確かに、温暖化ビジネスには、陰謀らしき
悪質な「お金のやりとり」があったが、暴かれ
失脚した。
所で、日本の原発の日本領海12海里(22.2km)までの
暖め効果を計算したこと有りますか?
多分、驚くと思います。日本の全エネルギーの??%と
計算すると、いやー驚きます。 これは、マリさんに一票
所で、これをどう解釈すれば良いのですか?
「 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131121-00000974-bengocom-soci 」
Posted by ひで at 2013年11月21日 17:35
ひでさん
温暖化問題が難しいのは、あくまでも予測であり、確率が関わってくるということ。また、気象の変化にはさまざまな要因が重なっている、ということではないでしょうか。ですからシミュレーションが当たらないことも当然ありえます。
またコンピューターによるシミュレーションというのは、意図的に操作できるということも不審を招くのかもしれません。ダムなどの治水事業の根拠に用いられる河川の「基本高水」の数値も、意図的に過大にしていると批判されています。
温暖化の場合、さらにエネルギー産業の利権が絡んでくるためにそちらばかりに目が行き「温暖化詐欺」などと言う人も出てくるのでしょう。原発安全神話に騙された人たちはとりわけ詐欺意識が強いのかもしれません。
日本における原発の温排水については、国立環境研も認めているとのことですし竹野内真理さんが言っていることは間違いないだろうと思います。何しろ狭い国土に54基もの原発を建ててしまった訳で、温排水がかなり海を温めるといえるでしょう。世界全体にならして考えれば原発の温排水より二酸化炭素の方がはるかに温暖化に寄与しているが、日本だけを取り上げたらそうではなさそうです。
ところで、私が気になるのは温暖化による海洋の変化です。以下の記事にも書いたように、川崎健氏は地球温暖化によって熱塩循環が閉鎖される可能性を指摘しています。もしこのようなことが起きれば、地球の気候が暴走する可能性があると言います。
http://onigumo.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-b14f.html
また、江守氏も気温上昇がある値を超えると不連続な変化をする可能性があることを指摘しています(これをティッピング・ポイントと呼んでいます)。たとえば、温暖化で減少しているグリーンランド氷床がティッピング・ポイントを超えると、気温上昇が止まっても氷床の減少が続いてしまうという現象です。他にもティッピング要素がいろいろあるようです。
こういうことも温暖化の問題点が一般の人にとって分かりにくい点かもしれません。
なお、地球には二酸化炭素の分圧に応じて無凍結状態・部分凍結状態・全球凍結状態という3つの安定した状態があり、ひとたび安定を超えると別の安定状態に急激に移行する、という田近英一さんの説も私は大変興味深く読みました。
http://onigumo.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-ec8d.html
>所で、これをどう解釈すれば良いのですか?
「 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131121-00000974-bengocom-soci 」
これに関しては、私も???です。厳罰化で対処すべきことではないように思いますが。
温暖化問題が難しいのは、あくまでも予測であり、確率が関わってくるということ。また、気象の変化にはさまざまな要因が重なっている、ということではないでしょうか。ですからシミュレーションが当たらないことも当然ありえます。
またコンピューターによるシミュレーションというのは、意図的に操作できるということも不審を招くのかもしれません。ダムなどの治水事業の根拠に用いられる河川の「基本高水」の数値も、意図的に過大にしていると批判されています。
温暖化の場合、さらにエネルギー産業の利権が絡んでくるためにそちらばかりに目が行き「温暖化詐欺」などと言う人も出てくるのでしょう。原発安全神話に騙された人たちはとりわけ詐欺意識が強いのかもしれません。
日本における原発の温排水については、国立環境研も認めているとのことですし竹野内真理さんが言っていることは間違いないだろうと思います。何しろ狭い国土に54基もの原発を建ててしまった訳で、温排水がかなり海を温めるといえるでしょう。世界全体にならして考えれば原発の温排水より二酸化炭素の方がはるかに温暖化に寄与しているが、日本だけを取り上げたらそうではなさそうです。
ところで、私が気になるのは温暖化による海洋の変化です。以下の記事にも書いたように、川崎健氏は地球温暖化によって熱塩循環が閉鎖される可能性を指摘しています。もしこのようなことが起きれば、地球の気候が暴走する可能性があると言います。
http://onigumo.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-b14f.html
また、江守氏も気温上昇がある値を超えると不連続な変化をする可能性があることを指摘しています(これをティッピング・ポイントと呼んでいます)。たとえば、温暖化で減少しているグリーンランド氷床がティッピング・ポイントを超えると、気温上昇が止まっても氷床の減少が続いてしまうという現象です。他にもティッピング要素がいろいろあるようです。
こういうことも温暖化の問題点が一般の人にとって分かりにくい点かもしれません。
なお、地球には二酸化炭素の分圧に応じて無凍結状態・部分凍結状態・全球凍結状態という3つの安定した状態があり、ひとたび安定を超えると別の安定状態に急激に移行する、という田近英一さんの説も私は大変興味深く読みました。
http://onigumo.cocolog-nifty.com/blog/2009/10/post-ec8d.html
>所で、これをどう解釈すれば良いのですか?
「 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131121-00000974-bengocom-soci 」
これに関しては、私も???です。厳罰化で対処すべきことではないように思いますが。
Posted by 松田まゆみ at 2013年11月21日 22:11
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