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2012年12月22日

国際原子力ムラという諸悪の根源

 日本科学者会議の発行する「日本の科学者」の1月号の特集は、「国際原子力ムラ その虚像と実像」である。

 このタイトルから分かるように、いわゆる原子力ムラは日本国内だけの問題ではない。福島の原発事故によって原子力ムラの嘘と隠蔽が白日のもとにさらされたが、それでもなお日本の原子力ムラのメンバーが何の責任もとらずに平然と嘘をついていられるのも、バックに国際原子力ムラによる保護があるからだ。

 高橋博子さんによる「冷戦下における放射線人体影響の研究―マンハッタン計画・米原子力委員会・ABCC」では、米原子力委員会、国際原子力機構(IAEA)、国連科学委員会、米国放射線防護審議会(NCRP)、国際放射線防護委員会(ICRP)が互いに協力して、核開発は原子力発電の推進に優位な体制を形成してきたことを解説している。つまり、これらの機関における放射線防護とは、放射線の影響を無視したり隠蔽するなどして過小評価することであり、放射能から人間を守ることではない。

 イヴ・ルノワール氏による「国際原子力ムラ―その成立の歴史と放射線防護の実態」も、同じく国際原子力ムラの設立の経緯をひも解いている。国際原子力ムラは「平和のための原子力」を掲げ、チェルノブイリの被害を隠蔽して人々を騙してきたのである。ルノワール氏の結論の部分を以下に引用しておきたい。

 国際原子力ムラは、危機があるたびに強化されていく。スリーマイル島では、米原子力規制委員会の完全管理下にあったため、介入することができなかった。チェルノブイリを処理するにあたっては、この過ちから得られた教訓を生かすことができた。福島原発が爆発した時、彼らは準備万端で、「正当な」情報の管理を素早く手中におさめた。日本政府の脆弱さのために干渉がずいぶん楽になったことは確かである。いずれにしても、前述した「原子力事故援助条約」によって原子力の危機管理はIAEAに委ねられているため、これから起こりつつあることに対して、日本はいっさい客観的な解釈ができないのだ。チェルノブイリが今、繰り返されている。


 つまり、福島第一原発が爆発したときから、すぐに国際原子力ムラの介入がなされ、日本は彼らの意のままになっているといえよう。事故は過小評価され、被ばくによる健康被害を黙殺することが国際原子力ムラによってすでに決められているといっても過言ではない。

 ウラディミール・チェルトコフ氏による「チェルノブイリの犯罪―福島にとっての一つのモデル」では、IAEAとWHO(世界保健機関)による犯罪的な過小評価を批判している。両者はチェルノブイリの事故後にベラルーシで増加し悪化する病気の大半は、ストレスや放射能恐怖症、両親のアルコール依存症が原因だとして、被ばくの影響を隠蔽したのだ。

 この論説では、とりわけエートス・プロジェクトについて具体的に説明している。エートスは、1976年にフランス電力公社(EDF)とフランス原子力庁(CEA)によって設立された組織だ。エートスは1996年にチェルノブイリの事故で汚染されたベラルーシのオルマニー村の放射線測定センターにやってきた。この測定センターはワシリー・ネステレンコ博士が設置したもので、エートスはネステレンコに教えを乞うために近づいた。ところがエートスは、ネステレンコ教授に指導を受けながら、彼が所有していたデータを収奪し、ネステレンコ氏の活動を妨害したのだ。

 ネステレンコ博士は、ベラルーシの汚染された地域に370の放射能測定地区センターを設置し、食物の汚染の低減などの指導を行い、りんごペクチンをベースにした栄養補助食品によって、子どもの臓器に取り込まれたセシウム137の体外排出に取り組んでいた。ところがエートスは子どもたちに放射能吸着剤を投与することを拒否してモルモットにしたのである。エートスは、あたかもチェルノブイリの被災地を支援するように見せかけ、子どもたちをモルモットにして放射能による被害データを持ち帰ったのだ。

 原子力ムラによる騙しの構造は、根が深くしかも強力だ。彼らは自分たちを守るためには何でもやる。この上もなく厄介な魔物のような集団だ。そして、福島第一原発も爆発直後から国際原子力ムラに支配されているのである。エートスはすでに福島にも上陸している。チェルノブイリと同じように放射能による健康被害を放射能恐怖症だとして住民に被ばくを強いている。

 国際原子力ムラのやっていることは、エセ科学を基にした原子力の擁護と推進である。国際原子力ムラについては、福島の事故以来、インターネットなどを通じて多くの人が知るところとなった。しかし、多くといっても日本人全体からしたらごく一部に過ぎない。原子力ムラの一員であるマスコミが何ら報道しようとしないからだ。国際原子力ムラと国内原子力ムラに操られ、被ばくを強いられる福島の状況はまるで悪夢のようである。今回の衆院選で脱原発に消極的な自民党が圧勝したことは、国際原子力ムラにとっては大歓迎だろう。

 恐ろしく思うのは、いわゆる原子力ムラのメンバーではない方にも、国際原子力ムラの主張と同じようなことを言っている人がいることだ。このような人たちはいったいどこまで国際原子力ムラの経緯や構造を理解しているのだろうか。今回の特集は「日本の科学者」というかなり限られた読者しか持たない雑誌だが、多くの人たちに是非読んでほしいと思う記事が多数掲載されている。

「日本の科学者」2013年1月号(本の泉社)


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