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鬼蜘蛛の網の片隅から › 政治・社会 › 「絶望しない」という絶望

2013年02月24日

「絶望しない」という絶望

 昨日届いた週刊金曜日の表紙の言葉を見て、ちょっとドッキリした。表紙には大きく「希望にすがるな 絶望せよ」と書かれている。しかし、すぐにこの言葉の意味が飲み込めた。

 この特集の前段にはこう書かれている。「絶望が欠けている、絶望が作りだされなければならない、絶望を眼前にして悶えなければならない、絶望にそうして強いられるときにこそ初めて我々は幾ばくかの可能性を見いだすだろう-本特集の主題はこれだ。」

 4基もの原発が爆発し未だに危機的状況を脱していないのに、この国では不思議なことに「希望」とか「復興」という掛け声ばかり聞こえてくる。こんな最悪な状況にありながら希望を追い求めるのは、まだ絶望感が足りないからだという主張だ。残念ながら、まさにその通りなのだろうと私も思う。

 考えてみたら、もう何年も前からこの国の政治には絶望していた。非正規雇用によるおびただしい貧困、うつ病、自殺者を生みだし、いじめが蔓延する学校や社会は絶望に満ちている。そのうえに3.11という大震災と世界最悪レベルの原発事故。福一の爆発を知ったとき、この国はどうなるのかと絶望のどん底に転がり落ちたような気がした。

 そして原発事故から2年目に入り、恐れていた甲状腺がんが顕在化してきた。すでに福島で3人の子どもが甲状腺がんと診断され、疑いのある子どもが7人もいる。これは検査をした内の一部にすぎない。潜在的にはまだまだいるだろう。もうすでに50人くらい出ている可能性がある、とも言われている。

「そうすると、もうすでに50人ぐらい甲状腺がんが出ている可能性がある」2/20井戸弁護士→環境省→山田医師(みんな楽しくHappyがいい)

 甲状腺に異常が見つかっているのは福島の子どもたちだけではない。関東地方でものう胞や結節が見つかっている子どもがいるし、そのような事例は子どもだけではない。

「自然状態では存在しない子供の甲状腺腫瘍」が続々!=原発汚染の最大の証明(瓢漫亭通信)

 甲状腺がんはこれからもっと増えていくだろうし、白血病なども増えていくだろう。被曝で免疫力が低下し、健康な人が減っていくだろう。チェルノブイリの悲劇が日本で再現されようとしている。ところが、政府は福島の人たちを避難させようとしない。子どもを見殺しにする政権に、決して期待などしてはならない。「復興」とか「希望」という言葉の裏にあるのは騙しと裏切りだ。なんと絶望的な国なのか。

 絶望感は安倍政権になってからさらに増大した。日本列島は大地震や火山噴火の危機に直面しているのに、自民党政権はのほほんと原発の再稼働や新設に向けて動いている。沖縄はまたも米国の犠牲にされようとしている。生活保護費は下げられ、大型公共事業に湯水のごとく税金が注がれる。また自然破壊の復活だ。地道に自然保護活動をしていても、絶望的気分になる。

 さらにTPP。安倍首相は「聖域なき関税撤廃が前提ではない」として、交渉参加に突き進もうとしている。一部の品目を関税撤廃の例外とするという条件での交渉を考えているのだろうが、TPPは「全物品が交渉対象となる」ことが原則だ。たとえ例外を設けたところで品目は限られるだろうし、いつまで保証されるか分かったものではない。日本の農業や国民皆保険の行く末を考えると絶望的だ。米国のポチとなり果てている安倍首相そのものも絶望的だ。

 しかし、自民党政権が絶望的なのはとっくに分かっていた。何よりも絶望的なのは、多くの国民がいまだに未練がましく自民党に期待しているということだ。「絶望的な自民党に絶望していない」、このことこそ絶望的なのだ。

 今年の初めに以下の記事を書いた。

すべての日本人に読んでほしい辺見庸氏の「明日なき今日」上
すべての日本人に読んでほしい辺見庸氏の「明日なき今日」下

 辺見氏は、「一回、完全に滅亡し崩壊しないと駄目だという思いがありますね」と言う。日本人は「日本が完全に滅亡し崩壊する」というところまで行きつかないと、絶望できないのかも知れない。

 行きつくところまでいって国民一人一人が「絶望」を徹底的に実感しない限り、社会を変える新しい動きは生まれてこないというのであれば限りなく虚しい。だって、その時には原発事故による健康被害で苦しみ命を落とす人たちが激増しているだろうから。あるいは、貧困がさらに広がり、福祉も切り捨てられて路頭に迷う人が激増しているかもしれない。もしかしたら、さらなる原発事故による放射能汚染で日本は壊滅的になっているかもしれないし、憲法が改定され徴兵制が復活しているかもしれない。それに抗議したくても、自由に物も言えないようになっているかもしれない。

 でも、そうなってみなければ心底絶望を感じられないというのがたぶん現実なのだろう。今の日本を見ていると、そうとしか思えない。希望なんてかけらもない。先の衆院選が終わったとき、ツイッターでは「闘いはこれからだ!」といった希望を語るツイートがずいぶん流れていたが、正直いって私はそんな気持ちにはとてもなれなかった。

 もちろん、絶望的だからといってなにもかも諦め、社会に目をつむって楽しいことだけやっていればいいという気はさらさらない。辺見氏は「身体をはった徹底的なパシフィズム(平和主義、反戦主義)が僕の理想です。九条死守・安保廃棄・基地撤廃というパシフィズムではいけないのか。丸腰ではダメなのか。国を守るためではなく、パシフィズムを守るためならわたしも命を賭ける価値があると思います。」と言う。

 大切なのは藁のような希望にしがみつかないこと。希望とは自ら動いて生みだすもの。どんなに絶望的であっても、やれることはやる。次の参院選で自民党政権にノーを突きつける。それしかない。



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Posted by 松田まゆみ at 16:29│Comments(2)政治・社会
この記事へのコメント
ヤフーブログに転載させてくださいね。
転載元はURL
えs4856http://onigumo.sapolog.com/e388880.html
貼らせていただきます。
Posted by あさり at 2013年03月28日 16:42
下関市長選開票結果
当 55,383 中尾友昭  63 無現
  39,656 西本健治郎 36 無新 西本氏は安倍系列の地元市議ですが、敗退しています。
下関市議補選開票結果
  改選数1
当 25,069 鬼頭薫  57 無新
  21,070 桑原博  66 無元
  20,624 酒本哲也 41 無新
  17,583 鈴尾進  63 無新

みらい山口ネットワークの鬼頭氏が当選して、安倍系列の元市議が敗北しています。

ここに書いてもいいのかわかりませんが、去年の衆議院選挙結果に疑問を持って以来 地方選挙に興味を持っています。

たいてい無所属なので判断しにくいですが、地方選挙は民意を表していると思います。
再度言わせてください。国民は馬鹿ではありません。

TPP,憲法改悪、徴兵制にならないよう希望を持ちたいと思います。
Posted by みけた at 2013年04月01日 08:34
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「絶望しない」という絶望
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