鬼蜘蛛の網の片隅から › 自然保護 › 北電の誤りが指摘された北海道環境影響評価審議会
2013年02月22日
北電の誤りが指摘された北海道環境影響評価審議会
新岩松発電所の新設工事に関する、北海道環境影響評価審議会小委員会の2回目の議事録が先日アップされた。これは昨年12月11日に開催されたものなのだが、なんと議事録の公開まで2カ月以上もかかっている。
議事録を読むと、今回の審議会で早矢仕委員から北電の誤りについて指摘があったことが分かる。早矢仕さんはシマフクロウの研究者だ。彼女は、以下の指摘をしている。
「資料2の事業者回答」というのは以下である。これは審議会委員の質問に対する事業者の回答だ。
新岩松発電所新設工事環境影響評価準備書 1次質問及び回答
早矢仕さんの指摘している部分は以下だ。
北電は、自分たちの行った調査では事業実施区域でシマフクロウの生息(ねぐら、採餌等)が確認されず、主要な生息地は対象事業実施区域から離れているといっているのだが、これは事実に反する。早矢仕さんも指摘しているように、ここは紛れもなく生息地だ。
ただし、早矢仕さんは「そこは余り利用していない場所だという前提で、今回さまざまな議論が進んでいると理解しております」と言っているのだが、本当に「余り利用していない場所」と言えるのだろうか。
シマフクロウは事業実施区域に採餌に来ている。そのことは、十勝自然保護協会が11月8日に北電へ提出した意見書でも、はっきり述べている。シマフクロウが採餌に利用している場所というのは、工事の施工が行われる場所そのものだ。工事がシマフクロウの生息環境に及ぼす影響は小さいどころか、極めて大きいのである。だから、「余り利用していない場所」という認識のもとで審議会が進められることは重大な誤りがある。
北電への意見書は送付先は北電なのだが、あて名は知事あてだから、北電は北海道にこの意見書を渡しているはずだ。北海道の担当職員はこのことを知っているだろうし、審議会ではこの事実を前提として審議がなされるべきだが、早矢仕委員は事業実施区域がシマフクロウの採餌場所になっていることを知らないようだ。
道職員は意見書に書かれた事実を審議会委員に伝えていないのだろうか? だとしたら、重要な事実を隠蔽して審議会を進めていることになる。道職員は審議会に道民意見を伝える義務はないかもしれないが、信義に反するのではなかろうか。
この審議会では、シマフクロウについての具体的審議は非公開になっているので、どんなことが話されているのか分からないのだが、もし専門家による検討機関に道民が指摘している事実がきちんと伝わっていないのなら大きな問題だ。
私は「不都合な真実を暴露しているブログをチェックする役人」という記事で、たとえ希少種であっても保護のために必要であれば種名の公表もすると書いた。新岩松発電所のアセスにおいても、事業実施区域の中にシマフクロウの採餌場があることを指摘せざるを得なかったのは、北電が「採餌場はない」「主要な生息地は離れている」「影響は小さい」と事実と異なることを言い張るからだ。希少種であることを理由に何でも非公開にしてしまえば、こうした欺瞞を暴くことはできない。
北電はシマフクロウの生息について事実を無視して、影響が小さいと主張している。ここに北電の体質がよく表れている。こんな杜撰な調査と報告を基に工事を進めることはあってはならない。
議事録を読むと、今回の審議会で早矢仕委員から北電の誤りについて指摘があったことが分かる。早矢仕さんはシマフクロウの研究者だ。彼女は、以下の指摘をしている。
そうだとしますと、資料2の事業者回答では「対象事業実施区域内で生息(ねぐら、採餌等)が確認されておらず」となっておりますが、ねぐらと採餌が確認されていないからといって、ここに生息が確認されていないと言ってはいけないと思います。ここは紛れもなく生息地に含まれますので、生息が確認されていないという言い方は、明らかな間違いです。ですから、質問したいとか意見を言いたいというのではなく、これは訂正していただかないと困るところです。共有させていただきたいのは、事業対象区域も生息地に含まれます。その上で、ここは余り利用していない場所だという前提で、今回さまざまな議論が進んでいると理解しております。それをまず申し上げておきます。
ですから、ねぐらと採餌が確認されていないという表現があって構いませんが、この文章の中の、生息が確認されていないとか、主要な生息地はよそだという表現はやめてもらわないと困るということです。このとおり評価書に載ってしまったら大変です。よろしくお願いします。
「資料2の事業者回答」というのは以下である。これは審議会委員の質問に対する事業者の回答だ。
新岩松発電所新設工事環境影響評価準備書 1次質問及び回答
早矢仕さんの指摘している部分は以下だ。
質問
予測対象となった種について、種の生息に影響が及ばない範囲で示せる予測結果があれば教示願います。
回答
重要な鳥類のうちシマフクロウの予測結果は以下のとおりです。
【予測対象時期】
本種は通年生息するため、通年を対象に影響を検討しました。
【影響予測】
「地形改変及び施設の存在」
対象事業実施区域内で生息(ねぐら、採餌等)は確認されておらず、主要な生息地は、対象事業実施区域から離れています。また、環境保全対策として、対象事業実施区域を設定する際には、既設岩松発電所周辺の現状や過去の土地利用状況を踏まえ、既存の道路や耕作跡地等、可能な限り既に改変されている区域を設定しました。
よって、地形改変及び施設の存在による本種の生息環境に及ぼす影響は小さいものと予測されます。
「工事用資材等の運搬、建設機械の稼働、造成等の施工による一時的な影響」
地形改変及び施設の存在と同様、対象事業実施区域内で生息(ねぐら、採餌等)は確認されておらず、主要な生息地は、対象事業実施区域から離れています。また、環境保全対策として、シマフウロウが採餌する夜間は原則として工事を行わないこと、工事中に使用する建設機械は可能な限り低騒音型・低振動型の機関を選定すること、工事用資材の運搬は原則として夜間は避けること等を行います。
よって、工事の施工による一時的な影響は小さいと予測されます。
北電は、自分たちの行った調査では事業実施区域でシマフクロウの生息(ねぐら、採餌等)が確認されず、主要な生息地は対象事業実施区域から離れているといっているのだが、これは事実に反する。早矢仕さんも指摘しているように、ここは紛れもなく生息地だ。
ただし、早矢仕さんは「そこは余り利用していない場所だという前提で、今回さまざまな議論が進んでいると理解しております」と言っているのだが、本当に「余り利用していない場所」と言えるのだろうか。
シマフクロウは事業実施区域に採餌に来ている。そのことは、十勝自然保護協会が11月8日に北電へ提出した意見書でも、はっきり述べている。シマフクロウが採餌に利用している場所というのは、工事の施工が行われる場所そのものだ。工事がシマフクロウの生息環境に及ぼす影響は小さいどころか、極めて大きいのである。だから、「余り利用していない場所」という認識のもとで審議会が進められることは重大な誤りがある。
北電への意見書は送付先は北電なのだが、あて名は知事あてだから、北電は北海道にこの意見書を渡しているはずだ。北海道の担当職員はこのことを知っているだろうし、審議会ではこの事実を前提として審議がなされるべきだが、早矢仕委員は事業実施区域がシマフクロウの採餌場所になっていることを知らないようだ。
道職員は意見書に書かれた事実を審議会委員に伝えていないのだろうか? だとしたら、重要な事実を隠蔽して審議会を進めていることになる。道職員は審議会に道民意見を伝える義務はないかもしれないが、信義に反するのではなかろうか。
この審議会では、シマフクロウについての具体的審議は非公開になっているので、どんなことが話されているのか分からないのだが、もし専門家による検討機関に道民が指摘している事実がきちんと伝わっていないのなら大きな問題だ。
私は「不都合な真実を暴露しているブログをチェックする役人」という記事で、たとえ希少種であっても保護のために必要であれば種名の公表もすると書いた。新岩松発電所のアセスにおいても、事業実施区域の中にシマフクロウの採餌場があることを指摘せざるを得なかったのは、北電が「採餌場はない」「主要な生息地は離れている」「影響は小さい」と事実と異なることを言い張るからだ。希少種であることを理由に何でも非公開にしてしまえば、こうした欺瞞を暴くことはできない。
北電はシマフクロウの生息について事実を無視して、影響が小さいと主張している。ここに北電の体質がよく表れている。こんな杜撰な調査と報告を基に工事を進めることはあってはならない。
知床に携帯基地局はいらない
『日高山脈を含む新国立公園の名称に「十勝」を入れるべきではありません!』のオンライン署名を開始
日高山脈一帯の国立公園の名称を巡る不可解
日高山脈一帯の国立公園の名称に「十勝」を入れる愚
十勝川水系河川整備計画[変更](原案)への意見書
ダムで壊される戸蔦別川
『日高山脈を含む新国立公園の名称に「十勝」を入れるべきではありません!』のオンライン署名を開始
日高山脈一帯の国立公園の名称を巡る不可解
日高山脈一帯の国立公園の名称に「十勝」を入れる愚
十勝川水系河川整備計画[変更](原案)への意見書
ダムで壊される戸蔦別川
Posted by 松田まゆみ at 14:29│Comments(0)
│自然保護
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。