さぽろぐ

日記・一般  |その他北海道

ログインヘルプ


鬼蜘蛛の網の片隅から › 自然保護 › 環境問題 › 問題だらけの地熱発電

2014年10月29日

問題だらけの地熱発電

 今年の春、道南に旅行に行った際に、森町の濁川にある森地熱発電所を見てきた。北海道電力の地熱発電所だ。日本では地熱資源のある場所の多くが国立公園や国定公園に指定されているのだが、ここはそのような自然公園ではない。

 濁川に沿った道を上流へと進んでいくと直径が2キロメートルほどの濁川盆地に出る。周囲を山に囲まれた盆地は田畑が広がり温泉がある。この盆地は、火山活動によってできたカルデラである。
問題だらけの地熱発電



 森地熱発電所の場合、地下から熱水や蒸気を取り出す生産井や、発電に利用したあとの熱水を地下に戻す還元井は盆地にあるのだが、発電所と冷却塔は盆地を取り囲む山の中腹にある。盆地からはもくもくと蒸気を上げている冷却塔が見える。
問題だらけの地熱発電



 まず発電所に行ってみた。蒸気を上げている冷却塔はかなりの騒音をたてている。なるほど、こんな大きな音が出るのであれば、民家や温泉がある盆地に発電所を造れないだろう。しかも盆地は農業地帯なので、冷却塔からの水蒸気に含まれる硫化水素や亜硫酸ガスの影響も考えて山の中に造ったのではなかろうか。電源開発がトムラウシの地熱発電について説明をした時に騒音はほとんど出ないと言っていたが、とんでもない。せめて「ある程度の騒音は出ます」くらい言うべきだろう。

 発電所が山の中にあるので、生産井や還元井との間には太いパイプラインが敷設されている。
問題だらけの地熱発電



 盆地にはパイプを巡らせた施設がいくつかある。生産井や減圧器、還元井などであろう。
問題だらけの地熱発電



問題だらけの地熱発電



 まさに大規模な工場群だ。しかも生産井は次第に蒸気量が減少するので次々と新しい井戸を掘らなければならないし、還元井も還元能力が低下してくるので新しいものを掘る必要がある。トムラウシのような山の中に造った場合、新たな井戸を掘るたびに自然が破壊されるだろう。

 水蒸気には硫化水素や亜硫酸ガス、熱水には砒素などの有毒物質が含まれており、毒性のある物質によって大気や土壌、あるいは地下水が汚染される危険性がある。また、熱水のくみ上げによって温泉の枯渇のほか、地震が誘発されたり地盤沈下が起きることが懸念される。

 ところで森地熱発電所は、当初出力5万キロワットとして認可された。しかし、その後蒸気量が減少して近年では発電出力が1.5万キロワット程度になったという。このために認可出力は半分の2.5キロワットに縮小された。(ウィキペディア参照)

 また、地熱発電は非常にコストの高い電力だ。事前の調査が必要な上、発電所の建設にも長い時間やコストがかかる。森地熱発電所のように発電出力が低下してしまうと、採算割れを起こしてしまうことになりかねない。かといって、新たな生産井や還元井を掘り続けるのもコストがかかるし環境破壊になる。

 国立公園など自然の保全を優先すべき場所の場合、初期調査ですら環境に悪影響を及ぼしかねない。

 電力会社はメリットばかりを強調するが、デメリットも多数あることを認識する必要がある。


あなたにおススメの記事


同じカテゴリー(自然保護)の記事画像
雌阿寒岳の麓に新たな道路は必要か?
然別湖周辺の風倒被害
更別村の十勝坊主とその保全
加森観光のサホロ岳北斜面スキー場予定地にはナキウサギが生息!
無駄な道路の典型、道道688号名寄遠別線
生物多様性に富む農高カシワ林の自然
同じカテゴリー(自然保護)の記事
 『日高山脈を含む新国立公園の名称に「十勝」を入れるべきではありません!』のオンライン署名を開始 (2024-04-08 12:03)
 日高山脈一帯の国立公園の名称を巡る不可解 (2024-03-30 20:49)
 日高山脈一帯の国立公園の名称に「十勝」を入れる愚 (2024-03-03 14:53)
 十勝川水系河川整備計画[変更](原案)への意見書 (2023-02-10 20:36)
 ダムで壊される戸蔦別川 (2022-08-19 21:16)
 雌阿寒岳の麓に新たな道路は必要か? (2020-12-25 22:08)

Posted by 松田まゆみ at 14:20│Comments(0)自然保護環境問題
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
問題だらけの地熱発電
    コメント(0)