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2013年03月12日

十勝川水系河川整備計画に寄せられた不自然な意見書

 昨日、北海道開発局帯広開発建設部のホームページを見たら、「十勝川水系河川整備計画[変更](原案)について寄せられたご意見」が掲載されていた。

関係住民の方々から寄せられたご意見

 ざっと目を通してみたが「やっぱりね~」という感想をもった。つまり、寄せられた意見の大半は計画案に対する具体的な問題提起ではなく、抽象的な賛成意見ばかりだ。札内川は樹林化が進んで礫川原が減少してしまったから自然再生に賛同するとか、地震・津波対策は重要、といったものばかり。

 意見は24件寄せられているのだが、河川管理者の提案に基本的に賛成するという意見ばかりというのがまず不自然だ。もし私が原案に賛成する立場だったら、わざわざ賛意を示す意見など送らないだろう。原案に納得できない部分や訂正すべきことがあるからこそ意見を述べるというのが普通の人の感覚だと思う。

 もう一つ不可解なのが、今回の意見募集が果たしてどれほど一般住民に知れ渡っていたのかということ。帯広開発建設部のホームページを定期的に見ている一般市民などほとんどいないだろうから、新聞などでお知らせしなければまず知ることができない。今回の意見募集が新聞に掲載されたかどうか知らないが、私は気がつかなかった。掲載されてもこのような記事は地方版にごく小さく載るだけだ。知っていた人がそれほど多いとは思えない。

 ただし業界関係者は別だ。たとえば「NPO法人十勝多自然ネット」。日頃帯広開発建設部の事業を請け負っている土建業者の団体だから、当然このような情報は知っているだろう。帯広開発建設部は「札内川懇談会」という組織を設置しているのだが、「NPO法人十勝多自然ネット」もこの懇談会に参加している。

 つまり、意見を寄せた人の中に業界関係者が多数入っている可能性が高いと思えてならない。公表の際には意見を寄せた人の名前を伏せているのだから、いくらでもそういうことはできるだろう。もしそうであるなら、意見募集など出来レースみたいなものだ。

 ところで「業界関係者も公述した十勝川水系河川整備計画公聴会」に、十勝多自然ネットのT氏が公聴会で「開発行政を天まで持ち上げるかのような発言までし、・・・」と書いたが、意見書のその部分を以下に引用しておこう。

最後になりますが、未開地北海道が僅か60年余りで、私たちが衣食足りてと感じるまでに成った背景には、「北海道開発局」の一元的な組織体制で、総合開発計画の基、弛みない社会基盤整備の成果と理解し、感謝しています。
時代の流れと共に、社会的ニーズも様変わりする昨今ですが、これからも一貫して大切なことは、維持管理を含む基盤整備イコール「国土の強靭化」だと思います。
更なる60年先を見定め、自信と誇りを持って「地域全体の幸福度の向上」に努めていただく事をお願いいたします。


 歯が浮くようなお世辞とはこのことではなかろうか。川のあちこちにダムや堰をつくって河川生態系を大きく破壊し、札内川の砂礫川原を減少させたのは開発局なのである。河川管理者が河川生態系を破壊して、今度は自然再生事業・・・こういうのをマッチポンプという。

 ところで礫川原の再生事業は札内川に限ったことではない。インターネットで検索してみると全国で河川敷の樹林化が進行し、同じような再生事業が始まっている。取手川、多摩川、天竜川、鬼怒川などいろいろ出てくる。ダムで砂礫の流下を止めてしまったのだからこれは当然の結果なのだ。

 天竜川支流の三峰川に関する論文では、樹林化と礫川原減少がダムや砂防事業、砂利採取が原因であるとはっきりと書かれている。

セグメント1河道における礫河原環境再生に向けた三峰河青島地区での実証的研究

 国土交通省はどうやら、新しい公共事業の創出として礫河原再生を推進しているらしい。こうした事業で一時的には砂礫川原が出現するだろうが、所詮対処療法である。日本も欧米のように老朽化したダムから撤去を考えていくべきではなかろうか。



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Posted by 松田まゆみ at 22:54│Comments(0)河川・ダム
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