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鬼蜘蛛の網の片隅から › 政治・社会 › 私たちはどこまで富や経済成長を求めるべきか

2009年12月31日

私たちはどこまで富や経済成長を求めるべきか

 この一年を振返って、どんな進歩や変化があったのかといえば、北海道の大規模林道(山のみち)の中止や平取ダム、サンルダムなどの凍結でしょう。自然を破壊するだけの無駄な公共事業への反対運動は、民主党への政権交代に後押しされて成果をあげました。これは、長年自然保護運動に関わってきた私たちにとって大きな喜びです。

 しかし、公共事業を削減し、その予算を子ども手当てのような形で庶民へ配分することでこの国の問題が解決するわけではありません。

 森田実さんは、鳩山政権の「コンクリートから人へ」という政策へ警鐘を鳴らし「結論から言おう『コンクリートから人へ』は、日本を破滅させる悪魔の政治スローガンである」とまで書いています(「森田実の言わねばならぬ」より)。要するに、生産や労働から手を抜くと経済が衰退し、不況と財政難になるという主張です。そして、以下のようにも語っています。

 「民主主義的資本主義は、民主主義と経済力の強化・維持のための自由な経済活動の二つの柱の上に成り立っている。民主主義は大多数の国民の要求を満たす富の配分のシステムであり、経済成長は国民社会の富を増進させるものである」

 「ちきりん」さんは、以下のような記事を書いています。

 この国は“無駄”で食っている

 お二人の言いたいことは分かるのですが、それではどうすべきなのでしょうか?

 経済成長という考えには、「人間は生物である」「人間は自然の生態系の一員である」という意識が欠落しているように思えてならないのです。私たち人間の住む地球の資源は有限です。経済成長は、その資源を食いつぶし地球を痛めつけていくことに他なりません。

 ダムや道路などの建設は、森や川の生態系を破壊します。ダムや防波堤は、止まることのない海岸浸食を引き起こしています。酸性雨によって森が枯れ、天然林の過度の伐採によって森の生態系が破壊されているのです。こうした破壊を続ければ、近い将来、取り返しのつかない事態を招くことになるでしょう。きれいな空気や水はどこからもたらされるのでしょうか? 人間の生の土台となっている自然を守らない限り、経済活動どころか人間の生存すら成り立たなくなるでしょう。

 日本の山はどこに行ってもダムだらけです。こうした公共事業がなぜこれほどまで行われてきたのかといえば、利権構造です。経済成長とともに金の亡者となった一部の人々によって自然が食いつぶされ、弱者を切り捨てる政治で貧富の差が広がってきたことを忘れてはなりません。マネー経済を操って巨額の富を得ている人がいる一方で、過労死するほど過酷な労働を強いられている人もいるし、仕事にありつけずに路頭に迷う人もいるのです。

 ならば、特定のところにお金が集まってしまうような構造を是正し、大量生産・大量消費を慎み、雇用のあり方を変えていく必要があります。たとえば、福祉や医療、教育の場にはもっとお金や人手が必要です。介護施設や保育所に入所したくても入れない人たちが山のようにいます。食糧自給率を上げるために、農業従事者も必要でしょう。無駄な公共事業を減らして捻出したお金は、このような雇用のために使われるべきです。温暖化をはじめとした環境問題と経済成長は矛盾するのです。環境対策名目でお金をばら撒いて景気回復を図ろうとしても地球温暖化を防ぐことはできないでしょう。

 歳を重ねるにつれ、日常生活でほんとうに必要な物はごく限られていると実感するようになりました。生きていくための必需品はそれほど多くはありません。人間の欲はきりがないのかもしれませんが、私たちは物理的には十分な豊かさを享受できるようになりました。しかし、それと同時に人と人とのコミュニケーションや他者への思いやりの心が失われ、いじめが蔓延し、うつ病や自殺者が激増しました。これ以上物質的な豊かさや利便性を追求続けたら、自然の摂理からはみ出て自然からのしっぺ返しを受けるでしょう。

 つまり、人類が平和で持続可能な社会を築いていくためには、「人間は自然の一員である」ということをしっかりと認識して自然に感謝し、お金や物より、精神的な豊かさや他者への思いやりを大切にする社会に転換していくべきです。経済成長路線に終止符を打ち、人口の減少とともに経済を縮小していくことこそ真剣に考えていくべきです。

 鳩山首相は年の終わりに経済成長戦略の基本方針を打ち出しました。多くの人が景気回復と経済成長を望んでいます。しかし、自然破壊と温暖化を招いた元凶を見つめなおし、自然に対する驕りを捨てなければ人類に未来はないように思います。私たちは困難な岐路に立たされているのです。

 では、よいお年をお迎えください。


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Posted by 松田まゆみ at 21:00│Comments(7)政治・社会
この記事へのコメント
あまりにも大きなテーマですので一部分だけの、私なりの意見としたいと思います。
昨年は天候不順で、良い草が採れませんでした。私の診療している酪農家は、いわゆる大型ではなく家族型の酪農で生産量も少なく、輸入穀物に依存することも少ないのです。
大型酪農家は、昨年は草が悪く生産が伸びないので、穀物を給与して生産を確保しようとします。だから病気も多くなって経営が悪化しています。
ところが私の診療している農家は、生産が落ちても天気が悪かったのだからと、仕方ないと決め込んでいます。何もしない。
生産が落ちた分だけ牛の病気が少なく、仕事が楽になり経費がかからない。たまたま、昨年乳価が上がったために、軒並み経営が良いのです。
大型農家はその逆なのです。病気が増えて購入飼料がたくさん必要になり経営が悪くなる。それでも効率を求めて走っているために、どうしても収入(乳量)が欲しいのです。農協も沢山集荷して欲しいのです。
生産効率を上げると牛や土地や環境に負荷がかかり、結局はそれほど儲けにつながらない。許容範囲で生きる方策を、経済活動は教えてはくれません。
ちょっと解り難かったかな?スンマセン
Posted by そりゃないよ獣医さん at 2010年01月01日 00:30
私が思いますに 経済成長の為に開発事業は不可欠だったというのは
大うそだった. その結果は 皆さも気付いていると思います.
これだけ北の自然をきりきざんて切り刻んでも大赤字不況です.
雇用者のポケットにマネーは残っていない.マネーは何処に消えたんでしょう?
もう国策の大組織にもっていかれる雇用はいらない
知事は むだな自然破壊工事の変わりに 道民の為になる生活周辺工事
を推進するしくみに初めから本気で 考えていくべきだと考えます

松田さん 本年もよろしくお願いいたします
Posted by るとれー at 2010年01月01日 13:11
獣医様

あけましておめでとうございます。貴重なご意見、ありがとうございました。

農業のことについては詳しくはわかりませんが、身近な方を見ていても大規模経営を目指した方は経営が悪化し、小規模で維持されている方は、金銭的に豊かではなくてもでも堅実に質のよいものを目指している方が多いように思います。何にしても、効率を優先した拡大路線には限界があるように思えます。難しい問題ですが。


こるとれーんtone様

あけましておめでとうございます。体調はいかがでしょうか? どうぞご自愛ください。

経済成長を続けることと自然環境を保全し温暖化を防止することは、どう考えても矛盾しています。現状維持でなぜいけないのでしょうか? 人口が減っているなら縮小するのが自然です。経済成長ばかり唱え、ダムの促進を訴える方たちには違和感を覚えざるを得ません。
Posted by 松田まゆみ at 2010年01月01日 15:02
あけまして おめでとうございます。(^^)
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
明るく穏やかな新年を迎えることができる幸せ・・・。
このささやかな願いが全世界の人々に平等に訪れる日が
一日も早く来ることを願いたいものだ、と思います。
私達は先を急ぎ過ぎているのかもしれませんね。利便性
の追究こそ至上主義と信じて疑わない人間が増える程に
足元の不安定さが見えずらくなるのでは・・と思います。
ささやかな願いが叶わなくて未来は開けない気がします。
Posted by 北の旅烏 at 2010年01月02日 09:27
北の旅烏様

あけましておめでとうございます。こちらこそ、よろしくお願いいたします。

穏やかなお正月を迎え、今日も生きていることに幸せを感じつつ、地球のどこかでは、いえいえこの日本でも飢えや寒さに苦しんでいる人たちがいるのかと思うと、寒々としたものを感じざるを得ません。

穏やかな生活を送れてこそ、人は人らしく生きられるのでしょう。人が生きていくために本当に大切なものは何かと、しばしば考えさせられるこの頃です。
Posted by 松田まゆみ at 2010年01月03日 11:39
鬼蜘蛛さんのこのブログをヒントに書いてみました。参考にしてください。
酪農のこと少しおわかりいただければと思います。

http://okaiken.blog.ocn.ne.jp/060607/2010/01/post_5172.html
Posted by そりゃないよ獣医さん at 2010年01月03日 21:29
獣医様

ブログ、拝読させていただきました。おおよそのことは知っていましたが、乳牛の出産回数にご指摘ほどの大きな差があるとは知りませんでした。人間の都合で、ここまで牛という動物を使い捨てにしている現状に驚きです。消費者は乳脂肪率の高い牛乳のほうがおいしいという理由で牛乳を求めがちですが、酪農の現実を知らずに不自然な牛乳を買わされているともいえそうですね。
Posted by 松田まゆみ at 2010年01月04日 11:55
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