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2012年03月26日
砂防工事で居辺川を殺してはならない
十勝総合振興局帯広建設管理部(旧帯広土木現業所)から十勝水系の居辺川(おりべがわ)で砂防事業を行うという話があり、先日、事務所に赴いて説明を聞いてきた。
砂防事業の予定地は上士幌町内の全長約6キロメートルの区間。河床に堆積している土砂が浸食によって移動するのを防ぐというのがこの砂防工事の目的だという。上流より床固工(とこがためこう)12基、護岸工600メートル、遊砂地工1カ所を造る計画だ。以下のサイトの6番の事業計画だ。
平成22年度事業計画(案)策定段階事業一覧表
「床固工12基」と聞いて、これは川が死ぬのではないかと強い危惧を抱いた。床固工というのは、小規模の砂防ダムのようなもので、堰で段差をつけ、川床の一部を凹凸のあるブロックなどで固める工法だ。段差をつけることによって河川勾配を緩やかにし、川底の浸食を防止するというものだ。説明によると一つの堰堤の落差は1.5メートルから2.5メートルとのこと。このような構造物を連続して12基つくるというのだ。イメージとしては以下を参照していただきたい。
http://www.ktr.mlit.go.jp/nikko/nikko00006.html
また遊砂地というのは、河川を掘削してポケット状にすることで土砂をそこに堆積される施設だという。説明から、やはりかなりの自然破壊になるものと推測される。自然の河原が広がっている居辺川にこのようなコンクリートの構造物ができると想像しただけで、ぞっとする。
居辺川では、周囲の農地開発により大雨での増水が顕著だという。たしかにそれは事実だろう。大雨のたびに河川敷が洗われ、蛇行も変化して景色が一変することも珍しくない。平成15年の大雨では浸食によって被害が生じているし、道路の崩落による死亡事故も起きている。
この時はもちろん災害復旧工事をしたので、それ以上手をつけるとは思っていなかったのだが、河川管理者はとにかく川をいじりたいらしい。
私は居辺川には何度も行っているのだが、居辺川上流は礫の豊富な小河川で、十勝平野でもすぐれた自然が残されているところだ。河川敷、河畔林、農耕地、河岸段丘の森林などが一体となって、多様な生態系を保っており、野鳥が豊富でワシタカ類もよく見られる。
河川敷には礫河原特有のクモが生息している。たとえば、ゴマダラヒメグモ、カワラメキリグモ、ハイタカグモ、ハモンエビグモ(本種は礫河原特有といえるかどうか分からないが、少なくとも私は礫河原でしか見たことがない)など。いずれもレッドリストなどに掲載されているような種ではないが、北海道ではどこにでも生息しているというクモではない。
また、ここは十勝地方でも有数のセグロセキレイの生息地だ。セグロセキレイも礫河原に特有な鳥で、北海道では生息できる河川が限られているのだが、居辺川周辺では越冬もしており重要な生息地となっている。
ここに床固工群をつくって砂礫の動きをとめてしまったなら、これらの動物の好適な生息地がはたして保たれるのだろうか?
十勝には然別川という小河川があるのだが、ここでも床固工群をつくって河川生態系を滅茶苦茶にしたという経緯がある。この川を見るにつけ、あまりの河川生態系破壊に唖然とする。
そもそも砂礫の移動を防ぐのが目的だというが、川が砂礫を運ぶのは自然の摂理だ。それを砂防工事で止めてしまうと礫が下流に運ばれなくなって下流域が浸食される。このためにさらに砂防工事を行うという悪循環を生みだしかねない。札内川支流の戸蔦別川がいい事例だ。戸蔦別川では、上流にいくつもの砂防ダムをつくったため下流部が浸食され15基もの床固工群を造った。それでも川床低下は止まらず橋脚の下部がえぐられるなど深刻な状況になっている。
また、砂防工事で土砂を止めてしまうと海への砂の流出が減り、海岸浸食が加速される。海岸線がどんどん後退し、護岸工事で固められることになる。砂防工事に起因する浸食は取り返しのつかないことになるのだ。このような例はいくつもある。
河川の周辺に人家や道路などがある以上、ある程度の護岸工事などはやむを得ないが、砂防ダムや床固工などによる河川生態系への悪影響は計り知れない。居辺川の床固工と遊砂地は取りやめるべきだろう。
砂防事業の予定地は上士幌町内の全長約6キロメートルの区間。河床に堆積している土砂が浸食によって移動するのを防ぐというのがこの砂防工事の目的だという。上流より床固工(とこがためこう)12基、護岸工600メートル、遊砂地工1カ所を造る計画だ。以下のサイトの6番の事業計画だ。
平成22年度事業計画(案)策定段階事業一覧表
「床固工12基」と聞いて、これは川が死ぬのではないかと強い危惧を抱いた。床固工というのは、小規模の砂防ダムのようなもので、堰で段差をつけ、川床の一部を凹凸のあるブロックなどで固める工法だ。段差をつけることによって河川勾配を緩やかにし、川底の浸食を防止するというものだ。説明によると一つの堰堤の落差は1.5メートルから2.5メートルとのこと。このような構造物を連続して12基つくるというのだ。イメージとしては以下を参照していただきたい。
http://www.ktr.mlit.go.jp/nikko/nikko00006.html
また遊砂地というのは、河川を掘削してポケット状にすることで土砂をそこに堆積される施設だという。説明から、やはりかなりの自然破壊になるものと推測される。自然の河原が広がっている居辺川にこのようなコンクリートの構造物ができると想像しただけで、ぞっとする。
居辺川では、周囲の農地開発により大雨での増水が顕著だという。たしかにそれは事実だろう。大雨のたびに河川敷が洗われ、蛇行も変化して景色が一変することも珍しくない。平成15年の大雨では浸食によって被害が生じているし、道路の崩落による死亡事故も起きている。
この時はもちろん災害復旧工事をしたので、それ以上手をつけるとは思っていなかったのだが、河川管理者はとにかく川をいじりたいらしい。
私は居辺川には何度も行っているのだが、居辺川上流は礫の豊富な小河川で、十勝平野でもすぐれた自然が残されているところだ。河川敷、河畔林、農耕地、河岸段丘の森林などが一体となって、多様な生態系を保っており、野鳥が豊富でワシタカ類もよく見られる。
河川敷には礫河原特有のクモが生息している。たとえば、ゴマダラヒメグモ、カワラメキリグモ、ハイタカグモ、ハモンエビグモ(本種は礫河原特有といえるかどうか分からないが、少なくとも私は礫河原でしか見たことがない)など。いずれもレッドリストなどに掲載されているような種ではないが、北海道ではどこにでも生息しているというクモではない。
また、ここは十勝地方でも有数のセグロセキレイの生息地だ。セグロセキレイも礫河原に特有な鳥で、北海道では生息できる河川が限られているのだが、居辺川周辺では越冬もしており重要な生息地となっている。
ここに床固工群をつくって砂礫の動きをとめてしまったなら、これらの動物の好適な生息地がはたして保たれるのだろうか?
十勝には然別川という小河川があるのだが、ここでも床固工群をつくって河川生態系を滅茶苦茶にしたという経緯がある。この川を見るにつけ、あまりの河川生態系破壊に唖然とする。
そもそも砂礫の移動を防ぐのが目的だというが、川が砂礫を運ぶのは自然の摂理だ。それを砂防工事で止めてしまうと礫が下流に運ばれなくなって下流域が浸食される。このためにさらに砂防工事を行うという悪循環を生みだしかねない。札内川支流の戸蔦別川がいい事例だ。戸蔦別川では、上流にいくつもの砂防ダムをつくったため下流部が浸食され15基もの床固工群を造った。それでも川床低下は止まらず橋脚の下部がえぐられるなど深刻な状況になっている。
また、砂防工事で土砂を止めてしまうと海への砂の流出が減り、海岸浸食が加速される。海岸線がどんどん後退し、護岸工事で固められることになる。砂防工事に起因する浸食は取り返しのつかないことになるのだ。このような例はいくつもある。
河川の周辺に人家や道路などがある以上、ある程度の護岸工事などはやむを得ないが、砂防ダムや床固工などによる河川生態系への悪影響は計り知れない。居辺川の床固工と遊砂地は取りやめるべきだろう。
十勝川水系河川整備計画[変更](原案)への意見書
ダムで壊される戸蔦別川
集中豪雨による人的被害は防げる
札内川「礫河原」再生事業を受け売りで正当化する報道への疑問
異常気象で危険が増大している首都圏
居辺川の現状(その2)
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Posted by 松田まゆみ at 23:29│Comments(0)
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