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鬼蜘蛛の網の片隅から › 自然保護 › 帯広市が学園通りの「変則3車線案」を否定

2012年08月26日

帯広市が学園通りの「変則3車線案」を否定

 「生物多様性に富む農高カシワ林の自然」という記事に追記として書いたが、6月21日に十勝自然保護協会と地球環境を守る十勝連絡会が「学園通り」の問題解決のために帯広市に対して3車線化の提案をした。内容については以下参照。

学園通りの拡幅問題で帯広市に3車線化を提案(十勝自然保護協会活動速報)

 ということで帯広市の検討結果を待っていたのだが、8月24日に自然保護団体に対し説明があった。

 まず、自然保護団体の提案した案(自然保護団体は「変則3車線」としていたが、道路構造令と照らし合わせて整理すると「2車線」とのこと)をもとに作成した詳細な図面を示し、自然保護団体の原案は部分的な修正が必要だが、構造的には可能であるとの説明があった。自然保護団体の懸念していた両側の歩道の確保も可能だという。

 であればこの案が採用されてもよさそうなものだが、結論としては否定されてしまった。関係機関(北海道と帯広警察署)の考え方を確認したうえで、将来の推計交通量と危険性の観点から部分的に2車線にはできない、との見解だ。以下が関係機関の考え方。

①学園通は、将来の自動車交通量(H37推計11,400台/日)により、4車線が必要ということで整備を進めており、未整備区間のみ、2車線にすることにはならない。
②安全面や交通の円滑化からも、4車線→2車線→4車線といった変則的な整備は、危険性が増すため、認められない。
③自動車の交通量も多く、大型車も頻繁に通行している。また、学校が多いことから自転車や歩行者の交通量も多いため、安全面には特に配慮が必要である。
④右折や左折専用の規制は、自動車交通量が非常に多い交差点や複雑な形状の交差点以外は、規制を掛けない。市内のほとんどの交差点に表示されている路面標識(→)は、道路管理者が誘導を目的に設置しており、取り締まりの対象外である。


 そして以下が帯広市の結論。

 学園通については、4車線での整備が必要なことから2車線で整備することにはならない。今後も、関係機関と協議を行い、環境に配慮した線形及び幅員の検討をすすめる。


 まず、帯広市が詳細な図面を作成して自然保護団体の案を検討したことについては評価したい。しかし、帯広市の結論には大きな疑問がある。

 平成37年での交通量を11,400台/日と推計し、これを根拠に4車線化が必要であるとしていることだ。道路構造令では9,600台/日以上の場合は4車線以上とするとなっていることが根拠だ。この推計値はH17年から19年にかけて交通体系調査を行い、人口の減少も加味して20年後の予測をしたものだという。

 ところで都市計画課長の説明によると、平成4年の交通推計量調査で学園通りの交通量は平成22年に16,500台/日と推計されたが、実際には約6,000台/日程度だったそうだ。これは「推計がやや過大だった」などというレベルではない。恐ろしく過大に見積もっていたのである。高齢化が進み人口は減る一方であるのに、平成37年に今の2倍近い交通量になるという推計はとうてい信じられない。

 少なくとも現状の交通量では2車線で問題ない。そして、将来的に4車線化の基準である9,600台以上にならないのであれば過剰な整備をしていることになる。

 ダムの根拠となっている基本高水流量なども、過大に見積もられていることが分かっている。道路整備においても、「はじめに整備ありき」で交通量の過大な推定値を出している可能性が高い。もちろん将来の交通量がどのように変化するかは誰にもわからないが、少なくとも過大の可能性がある不確定な推計交通量をもとに、今の時点で4車線化を決めてしまうのはあまりに早計だ。

 安全性についても疑問が残る。都市計画課長の説明によると、特に4車線から2車線に絞るのは問題が多いとのことだった。もちろん4車線の道路が途中で2車線になることが好ましいとは思わないし、交差点でドライバーが混乱する可能性があることは否定しない。しかし、右折や左折の専用レーンについては線形や表示で工夫をすれば大きな混乱が生じるとは考えにくい。それに、今だって4車線が部分的に2車線になっているわけだが、それがもとで事故などが起きているという説明はなかった。

 前回の提案の際に出された都市計画課長の見解は以下である(十勝自然保護協会のサイトより抜粋)。

・このような具体的な提案がなされたのははじめてであり、提案していただいたことに感謝します。
・道路には構造基準があり、今の幅で3車線化できるかどうか確認が必要。公安委員会との関係もある。このため提案が活かせるかどうかを検討しなければならない。
・国の補助事業で行うことを考えているため、補助事業としての基準に合致しなければならない。
・帯広市としてもカシワ林への配慮は必要と考えており、道路を北側に曲げる変更案を提示して住民と話し合ってきたが、住民の理解が得られていない。
・自転車を利用している高校生などが多いため、歩道は南側にもつけたい(現在は北側にある)。歩行者と自転車用の歩道の場合、3メートル50センチの幅が必要になる。
・道路計画が確定していないため、土地買収などはまだ行っていない。
・内部で検討し、検討結果を説明する。内部検討には1か月かかると思う。


 構造基準も、両側3メートル50センチの歩道もクリアできることが分かった。カシワ林も伐らずにすむ。課長の懸念はほぼクリアできる。ところが今回の回答では不確かな「推計交通量」を持ち出して4車線が必要だというのだ。ここには「4車線という計画を変えたくない」という頑なな姿勢が読み取れる。

 今回、推定交通量の説明を聞き思ったのは、「交通量の実態に合わせた整備をする」ということではなく、「幹線道路として整備したい」という机上の構想が先にあるということだ。だから実際の交通量と照らし合わせ「過剰な整備計画だったかもしれない」という視点はない。反省は決してせず、言い訳に終始するというのは日本のお役所の常である。

 北海道では計画した交通量が見込まれないため、暫定2車線にしている高速道路(高規格道路)が普通にある。したがって学園通りにおいても暫定2車線で様子を見るということで十分ではないか。車線減少という多少の不便さは我慢してもらうという柔軟的な思考も必要だろう。

 帯広市には環境保全の側面からぜひ再考してもらいたいと思う。



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Posted by 松田まゆみ at 06:59│Comments(0)自然保護
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