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鬼蜘蛛の網の片隅から › 政治・社会 › モラル・ハラスメントという陰湿ないじめ(1)

2013年01月23日

モラル・ハラスメントという陰湿ないじめ(1)

 モラル・ハラスメント(モラハラ)という言葉をご存知だろうか? 私がモラハラについて知ったのは2、3年前のことだ。それまではハラスメントといえば職場の上司によるパワーハラスメント(パワハラ)、性的嫌がらせであるセクシュアル・ハラスメント(セクハラ)、大学などで教員が学生に対して行うアカデミック・ハラスメント(アカハラ)くらいしか知らなかった。また家庭内ではドメスティック・バイオレンス(DV)や子どもへの虐待などが知られているが、モラハラについてはマスコミなどが取り上げることはほとんどなく、今でも知らない人が多いのではなかろうか。

 実は、モラハラは身近なところに常にあり、場合によってはきわめて深刻な被害をもたらしている。モラハラについて知れば知るほど、その深さや被害の深刻さ、対処の難しさを考えずにはいられない。モラハラを受けていながらそのことに気づかずに苦しんでいる人もいる。自分がモラハラの被害者や加害者にならないためにも、モラハラという巧みで陰湿ないじめについて多くの人に知ってほしいと思うようになった。そこで、モラハラについて何回かに分けて取り上げたい。

 モラル・ハラスメントの定義や具体的説明に関してはインターネットでも取り上げているサイトがいろいろあるが、ここでは主として香山リカ著「知らずに他人を傷つける人たち モラル・ハラスメントという『大人のいじめ』」(ベスト新書)の記述をもとに、考えてみたい。

モラハラとは何か
 モラル・ハラスメントという言葉が日本で知られるようになったのは、1999年にフランスの女性精神科医であるマリー=フランス・イルゴイエンヌの「モラル・ハラスメント―人を傷つけずにはいられない」が翻訳されたことによるという。モラハラがどこにでもあるハラスメントでありながら広く知られていないのは、まだモラハラが定義、認識されるようになって十数年しか経っていないということが大きいのだろう。

 イルゴイエンヌ医師によると、モラハラとは「ことばや態度で繰り返し相手を攻撃し、人格の尊厳を傷つける精神的暴力」である。つまり、言葉や態度による精神的ないじめ行為であり、人権侵害だ。また、イルゴイエンヌ医師はモラハラには「権力」がベースになるものとそうではないものがあり、「権力」がベースにならないモラハラの原因は加害者の「自己愛性格」であるとしている。

 上司が権力や上下関係を利用して部下を自分に従わせようとするハラスメントはパワハラとして知られているが、モラハラの場合は上下関係に関わりなく「歪んだ自己愛性格をベースにしたハラスメント」も含まれる。ただし、香山氏はモラハラの中には「自己愛性格」以外に、もっと一般的な心理的葛藤や病的なモラハラがあるのではないかと指摘している。

 いずれにしても、モラハラという人格の尊厳を傷つける精神的暴力行為は、実は職場や家庭などで日常的に行われている。ところが、被害者はしばしば自分が攻撃されるのは「自分に落ち度があるからではないか」と思い込み、自分が被害者であることに気づかないままいつまでも続けられる攻撃に苦しむこともある。被害者は人格の尊厳が傷つけられ、強いストレスを受けることによってときにはうつ病になる。しかし、モラハラについて知らず認識できなければ、そのストレスの正体がモラハラであることが理解できないのだ。

 興味深いのは、「人がふたり集まればモラハラは起こる」という指摘だ。本来、人は立場や年齢、性別に関わらず対等であるべきだし、それが社会や家庭で実現されていればモラハラは生じない。しかし、人がふたり集まった場合、たとえ「同じような人たち」であっても、二人の間には何らかの違いや力の偏りがどうしても生じてしまう。そのような対等ではない関係の中にモラハラが入り込むのである。

 そして、モラハラがもっとも顕著に現れるのが「職場」と「家庭」ということになる。自己愛性格などの「心の問題」がベースとなったモラハラは、権力を利用して脅すパワハラより対処や解決が困難なことが多い。しかも、モラハラは基本的に一対一の関係の中で行われるため周囲の人に見えにくく、なかなか気づいてもらえないことも多い。ゆえに、被害者はモラハラ被害から抜けられずに苦しみ続けて体調を崩してしまう。

モラル・ハラスメントという陰湿ないじめ(2)
モラル・ハラスメントという陰湿ないじめ(3)
モラル・ハラスメントという陰湿ないじめ(4)


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Posted by 松田まゆみ at 15:21│Comments(0)政治・社会
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