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2011年01月30日
三宅勝久著「債鬼は眠らず」があぶり出す悪徳貸金ビジネスの世界
ジャーナリストの三宅勝久さんの著書は「『自衛隊員が死んでいく』が暴く凄まじい自衛隊の内実」でも紹介したが、昨年出版された「債鬼は眠らず サラ金崩壊時代の収奪産業レポート」(同時代社)もサラ金にまつわる凄い世界が描かれている。
この本が出版されたのは、ちょうど昨年の秋に武富士が破たんし会社更生法を申請した直後。武富士の破たんはいわゆる「過払い」金の返還請求が経営を圧迫したなどと報道されてきた。しかし、この本を読むどうやらそんな単純な話ではなさそうだ。サラ金破綻の影に債権回収ビジネスの姿が浮かび上がってくる。
すでに多くの人が知っていると思うが、サラ金業界は債務者(お金を借りた者)に対し、利息制限法で決められている利息の上限(年18%)を超える金利を請求してきた。つまり、利息を払いすぎている債務者が大半なのだ。この超過して支払った利息は、サラ金に対して返還を求めることができる。近年はこの過払い金の請求が増えたため、サラ金業界の経営を圧迫しているという。
ここまではごく一般的な話なのだが、実は、債権が知らないうちに別の会社に売られてしまっていることがあるのだ。その場合、お金を借りたサラ金からではなく、別の会社から借金の請求がくることになる。過払い金があれば、本来それは取り返せるものなのに、ある日突然、まったく知らない会社から借金返済の取り立てがくるというのだからたまらない。これが債権回収ビジネスだ。
サラ金の債権の中には回収不能の不良債権が多数入っている。それを隠して海外の会社に売り付け、日本の債券管理回収会社に回収させているという。国際的なマネーゲームが展開されているわけだ。そして、債権回収の際には違法な取り立てが行われている。つまり、過払い金があっても無視して取り立て、本人が返せないと親族をターゲットにするという無茶苦茶な取り立てだ。
悪徳ビジネスを展開しているサラ金は、不動産を担保にして回収するという手法もとる。複数のサラ金から借金があると「おまとめ」と称し、不動産を担保にして借金を一本化させる。ところが、借金は膨らむばかり。そうやって行き詰まらせて担保をとろうというのだ。これを業界では「焼畑商法」というそうだ。やり方も凄いが、名前も凄い。
サラ金業界の肩をもつ早稲田大学の教授の話も出てくる。サラ金は情け容赦なく債務者から絞りとれるだけ絞りとる。さらに、過払い金返還や債務整理を謳って、あこぎな商法を展開している弁護士や司法書士・・・。近年は債務整理を謳った法律事務所の広告をあちこちで見かけるようになったが、派手な広告を出している事務所は要注意だろう。債務者にとっては二重、三重の地獄が待ち受けていることになる。
そして、今は奨学金の貸与がサラ金化してきているという。奨学金といえば、私も学生時代に日本育英会から奨学金をもらっていた。月額9000円だったから、それほど無理なく返還できた。しかし、今は貸出金額の桁が違う。月に12万円というコースもある。年額にしたら144万円。4年間借りたら576万円だ。卒業したとたんに、大変な借金を負うことになる。本書では、こうした奨学金ビジネスの裏側にも迫っている。
この本が描きだしている世界は、労なくしてお金を得ようというマネーゲームの裏舞台だ。額に汗して働いている人々を食い物にし、お金を操ることで金儲けを企んでいるサラ金や関連ビジネスの恐ろしい罠だ。
そして、三宅さんは最後にこう締めくくっている。
そういえば、「これが国民年金の未納者対策?」にも書いたように、国民年金の取り立てもクレジット会社だ。
そして、昨日の北海道新聞夕刊の桂敬一氏の「ニュースへの視点」というコラムを読んでドッキリした。そこには以下のように書かれていた。
アメリカを中心に国際的な恐ろしいマネーゲームが展開されようとしており、日本もそれに飲み込まれつつあるのではないか・・・。アメリカの穀物メジャー「カーギル」が日本の悪質債権回収業者に資金を融資していたと、三宅さんの本にもあった。穀物メジャーなどは実に不気味な存在だ。三宅さんの予感は現実のものになろうとしているのではなかろうか。なにやら背筋が寒くなってきた。
多くの人に是非読んでいただきたい本だ。
以下は、三宅さんのブログ。三宅さんは、杉並区の監査委員や選挙管理委員の不当報酬について、果敢に住民訴訟で追及している。
ジャーナリスト三宅勝久公式毒舌ブログ
この本が出版されたのは、ちょうど昨年の秋に武富士が破たんし会社更生法を申請した直後。武富士の破たんはいわゆる「過払い」金の返還請求が経営を圧迫したなどと報道されてきた。しかし、この本を読むどうやらそんな単純な話ではなさそうだ。サラ金破綻の影に債権回収ビジネスの姿が浮かび上がってくる。
すでに多くの人が知っていると思うが、サラ金業界は債務者(お金を借りた者)に対し、利息制限法で決められている利息の上限(年18%)を超える金利を請求してきた。つまり、利息を払いすぎている債務者が大半なのだ。この超過して支払った利息は、サラ金に対して返還を求めることができる。近年はこの過払い金の請求が増えたため、サラ金業界の経営を圧迫しているという。
ここまではごく一般的な話なのだが、実は、債権が知らないうちに別の会社に売られてしまっていることがあるのだ。その場合、お金を借りたサラ金からではなく、別の会社から借金の請求がくることになる。過払い金があれば、本来それは取り返せるものなのに、ある日突然、まったく知らない会社から借金返済の取り立てがくるというのだからたまらない。これが債権回収ビジネスだ。
サラ金の債権の中には回収不能の不良債権が多数入っている。それを隠して海外の会社に売り付け、日本の債券管理回収会社に回収させているという。国際的なマネーゲームが展開されているわけだ。そして、債権回収の際には違法な取り立てが行われている。つまり、過払い金があっても無視して取り立て、本人が返せないと親族をターゲットにするという無茶苦茶な取り立てだ。
悪徳ビジネスを展開しているサラ金は、不動産を担保にして回収するという手法もとる。複数のサラ金から借金があると「おまとめ」と称し、不動産を担保にして借金を一本化させる。ところが、借金は膨らむばかり。そうやって行き詰まらせて担保をとろうというのだ。これを業界では「焼畑商法」というそうだ。やり方も凄いが、名前も凄い。
サラ金業界の肩をもつ早稲田大学の教授の話も出てくる。サラ金は情け容赦なく債務者から絞りとれるだけ絞りとる。さらに、過払い金返還や債務整理を謳って、あこぎな商法を展開している弁護士や司法書士・・・。近年は債務整理を謳った法律事務所の広告をあちこちで見かけるようになったが、派手な広告を出している事務所は要注意だろう。債務者にとっては二重、三重の地獄が待ち受けていることになる。
そして、今は奨学金の貸与がサラ金化してきているという。奨学金といえば、私も学生時代に日本育英会から奨学金をもらっていた。月額9000円だったから、それほど無理なく返還できた。しかし、今は貸出金額の桁が違う。月に12万円というコースもある。年額にしたら144万円。4年間借りたら576万円だ。卒業したとたんに、大変な借金を負うことになる。本書では、こうした奨学金ビジネスの裏側にも迫っている。
この本が描きだしている世界は、労なくしてお金を得ようというマネーゲームの裏舞台だ。額に汗して働いている人々を食い物にし、お金を操ることで金儲けを企んでいるサラ金や関連ビジネスの恐ろしい罠だ。
そして、三宅さんは最後にこう締めくくっている。
回収がきつくなっているのは奨学金だけではない。国民健康保険、税金、公営住宅の家賃、NHK受信料-あらゆる「公的」な料金が、かつてない強い方法で取り立てられている。そして民間企業が関与を深めている。
これが何を意味するのか筆者にはまだよくわからない。だが、サラ金崩壊の先に、国境を越え、役所と一体化した、より大規模な債鬼の襲来を予感するのである。
そういえば、「これが国民年金の未納者対策?」にも書いたように、国民年金の取り立てもクレジット会社だ。
そして、昨日の北海道新聞夕刊の桂敬一氏の「ニュースへの視点」というコラムを読んでドッキリした。そこには以下のように書かれていた。
アメリカがTPPに託するもうひとつの狙いは、金融・流通・サービスの完全自由化だ。リーマン・ショックでギャンブル資本主義に懲りたはずのアメリカが、これらの市場での世界支配で起死回生を図ろうとしている、とみてまず間違いない。日本の郵貯も簡保も、今度こそ狙われるだろう。
アメリカを中心に国際的な恐ろしいマネーゲームが展開されようとしており、日本もそれに飲み込まれつつあるのではないか・・・。アメリカの穀物メジャー「カーギル」が日本の悪質債権回収業者に資金を融資していたと、三宅さんの本にもあった。穀物メジャーなどは実に不気味な存在だ。三宅さんの予感は現実のものになろうとしているのではなかろうか。なにやら背筋が寒くなってきた。
多くの人に是非読んでいただきたい本だ。
以下は、三宅さんのブログ。三宅さんは、杉並区の監査委員や選挙管理委員の不当報酬について、果敢に住民訴訟で追及している。
ジャーナリスト三宅勝久公式毒舌ブログ
Posted by 松田まゆみ at 20:32│Comments(2)
│政治・社会
この記事へのコメント
松田さま
三宅さんの本を記事にしてくださり、ありがとうございます。じつはブログで宣伝するよう、三宅さんではない杉並の仲間から頼まれていましたが、手がつけられずにいました。いつものことで恐縮ですが、転載させてください。ほかにもいい記事をありがとうございます。読んだとき、コメントさせていただきたいとは思うのですが、ドライアイやなにかでついつい失礼しています。
今日近藤先生に鳥インフルエンザについて聞いてきましたが、殺処分はまったく必要ないとのことでした。ありふれたウイルスであり、渡り鳥をどうにかするわけにはいかないから、感染を止めることはできない。鶏はむかしから感染し、死んでいたが、ウイルスを調べる方法がなかっただけ、検査方法ができたから大騒ぎになっているだけとのことでした。
三宅さんの本を記事にしてくださり、ありがとうございます。じつはブログで宣伝するよう、三宅さんではない杉並の仲間から頼まれていましたが、手がつけられずにいました。いつものことで恐縮ですが、転載させてください。ほかにもいい記事をありがとうございます。読んだとき、コメントさせていただきたいとは思うのですが、ドライアイやなにかでついつい失礼しています。
今日近藤先生に鳥インフルエンザについて聞いてきましたが、殺処分はまったく必要ないとのことでした。ありふれたウイルスであり、渡り鳥をどうにかするわけにはいかないから、感染を止めることはできない。鶏はむかしから感染し、死んでいたが、ウイルスを調べる方法がなかっただけ、検査方法ができたから大騒ぎになっているだけとのことでした。
Posted by 渡辺容子 at 2011年02月04日 16:38
渡辺容子様
こんにちは。転載はもちろん歓迎です。多くの方に読んでいただきたい本ですので、よろしくお願いいたします。
鳥インフルエンザの検査方法が確立したのが最近だとのことですが、考えてみればそうですよね。北海道でもハクチョウなどが死んで騒ぎになりましたが、昔から野鳥は鳥インフルエンザでしばしば死んでいたのだと思います。最近は人間が警戒を強め、死んだ野鳥のウイルス検査をするようになったので騒ぐようになったのだろうとは思っていました。近藤先生の貴重なご意見をお知らせいただき、ありがとうございました。
ドライアイ、どうぞお大事になさってくださいね。
こんにちは。転載はもちろん歓迎です。多くの方に読んでいただきたい本ですので、よろしくお願いいたします。
鳥インフルエンザの検査方法が確立したのが最近だとのことですが、考えてみればそうですよね。北海道でもハクチョウなどが死んで騒ぎになりましたが、昔から野鳥は鳥インフルエンザでしばしば死んでいたのだと思います。最近は人間が警戒を強め、死んだ野鳥のウイルス検査をするようになったので騒ぐようになったのだろうとは思っていました。近藤先生の貴重なご意見をお知らせいただき、ありがとうございました。
ドライアイ、どうぞお大事になさってくださいね。
Posted by 松田まゆみ at 2011年02月05日 07:11
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