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2013年05月29日
川を荒らす農地の排水事業
私が関わっている十勝自然保護協会では、これまで自然保護の立場から「美蔓地区国営かんがい排水事業」「富秋地区国営かんがい排水事業」という二つの「かんがい排水事業」に関し、希少動物の生息地に悪影響を与えるとして反対を表明してきた。
その中で明らかになってきたのは、「国営かんがい排水事業」の必要性だ。事業者は、排水事業の目的は大雨による農地の湛水被害による穫量減の解消だと説明している。ところが事業者との話し合いの中で、「湛水被害による収量減の解消」では排水事業の費用対効果が説明できないことが分かった。つまり、被害額より工事費のほうがはるかに大きいのである。詳しくは以下をお読みいただきたい。
明確になった「富秋地区」国営かんがい排水事業の欺瞞
上記記事の要点部分を以下に書き出しておく。
要するに、工事をすることが目的の事業だと言ってもいい。無駄な公共事業の典型だろう。
民主党政権での公共事業の縮小により、十勝地方での「かんがい排水事業」はほぼ終わったかのように思えた。ところがアベノミクスによって公共事業にじゃぶじゃぶと予算がつけられたため、また復活したのだ。以下に「国営かんがい排水事業」の説明があり、美蔓地区、札内川第二地区、上士幌北地区、士幌西部地区、富秋士幌川下流地区が挙げられている。このうち、アベノミクスによって新規に予算がついたのが、上士幌北地区、士幌西部地区だ。
農業農村整備事業マップ(帯広開発建設部)
そもそも、湛水被害というが、大雨が降れば多くの農地で一時的に水たまりができる。これは農地に限らず校庭や住宅の庭でも同じであり、当たり前のことだ。ところがその当たり前のことすら「湛水被害」だといって公共事業の目的にするのだから呆れる。
このような自然の摂理に反したことをすれば、当然その影響が出る。排水事業を促進することで、大雨などのときに水が河川に一気に流れ出るようになる。
昨年の3月に「砂防工事で居辺川を殺してはならない」という記事を書いた。比較的自然のままの姿を残している十勝北部の居辺川で大規模な砂防工事が計画されている。この工事について、今年の4月に事業者である帯広建設管理部に説明を求めると、上流部の河岸・川床の浸食が著しいため、河床の浸食防止と土砂の移動抑制のために床固工と遊砂地工を行うとの説明があった。
その工事内容の説明を聞いて唖然とした。居辺川の上流部は増水時でなければ長靴でも渡れる小河川なのだが、そこに切り欠きを入れた約100メートルもの堰堤を12基も造るという。つまり、川の両側の段丘をまたぐようにコンクリートの巨大な構造物を造るということだ。景観破壊はもちろんのこと河川生態系への影響が懸念されるし、下流部への影響も生じるのではなかろうか。
居辺川では以前に比べ、大雨が降ると一気に増水するようになったのは確かなようだ。それが上流部の浸食を加速させたのだ。では、なぜ一気に増水するようになったのか? それは森林を伐採して農地にしたり、排水事業によって水はけを良くしてしまったからだ。自然に逆らって排水を促進すれば河川が荒れたり災害が発生し、それを防ぐために砂防事業を行うことになる。さらに、上流での砂防事業は必ず下流に影響を及ぼすことになる。
事業費に見合った効果があるとは思えない(少なくとも事業者は具体的に説明できない)農地の排水事業が、河川の自然を破壊する砂防工事へと繋がっているのだ。アベノミクスによる公共事業を評価する人は、税金がこのように使われていることをきちんと知ってほしい。
その中で明らかになってきたのは、「国営かんがい排水事業」の必要性だ。事業者は、排水事業の目的は大雨による農地の湛水被害による穫量減の解消だと説明している。ところが事業者との話し合いの中で、「湛水被害による収量減の解消」では排水事業の費用対効果が説明できないことが分かった。つまり、被害額より工事費のほうがはるかに大きいのである。詳しくは以下をお読みいただきたい。
明確になった「富秋地区」国営かんがい排水事業の欺瞞
上記記事の要点部分を以下に書き出しておく。
大雨などによって畑に水が溜まると農作物に被害が出るのだが、その被害の解消目的で排水事業を行うと採算が全く合わない。そこで、公共事業をやりたい事業者が思いついたのは「作物生産効果」である。「水はけを良くすることによって生産性が上がり、国民の食糧増産に寄与する」との名目で、根拠も良く分からない「作物生産効果」を持ち出して、費用対効果があると主張する。しかし、金銭的負担があれば事業に参加しないという農家も出てくるだろう。それでは事業ができないので、受益者負担も地元の市町村が肩代わりするという仕組みだ。
要するに、工事をすることが目的の事業だと言ってもいい。無駄な公共事業の典型だろう。
民主党政権での公共事業の縮小により、十勝地方での「かんがい排水事業」はほぼ終わったかのように思えた。ところがアベノミクスによって公共事業にじゃぶじゃぶと予算がつけられたため、また復活したのだ。以下に「国営かんがい排水事業」の説明があり、美蔓地区、札内川第二地区、上士幌北地区、士幌西部地区、富秋士幌川下流地区が挙げられている。このうち、アベノミクスによって新規に予算がついたのが、上士幌北地区、士幌西部地区だ。
農業農村整備事業マップ(帯広開発建設部)
そもそも、湛水被害というが、大雨が降れば多くの農地で一時的に水たまりができる。これは農地に限らず校庭や住宅の庭でも同じであり、当たり前のことだ。ところがその当たり前のことすら「湛水被害」だといって公共事業の目的にするのだから呆れる。
このような自然の摂理に反したことをすれば、当然その影響が出る。排水事業を促進することで、大雨などのときに水が河川に一気に流れ出るようになる。
昨年の3月に「砂防工事で居辺川を殺してはならない」という記事を書いた。比較的自然のままの姿を残している十勝北部の居辺川で大規模な砂防工事が計画されている。この工事について、今年の4月に事業者である帯広建設管理部に説明を求めると、上流部の河岸・川床の浸食が著しいため、河床の浸食防止と土砂の移動抑制のために床固工と遊砂地工を行うとの説明があった。
その工事内容の説明を聞いて唖然とした。居辺川の上流部は増水時でなければ長靴でも渡れる小河川なのだが、そこに切り欠きを入れた約100メートルもの堰堤を12基も造るという。つまり、川の両側の段丘をまたぐようにコンクリートの巨大な構造物を造るということだ。景観破壊はもちろんのこと河川生態系への影響が懸念されるし、下流部への影響も生じるのではなかろうか。
居辺川では以前に比べ、大雨が降ると一気に増水するようになったのは確かなようだ。それが上流部の浸食を加速させたのだ。では、なぜ一気に増水するようになったのか? それは森林を伐採して農地にしたり、排水事業によって水はけを良くしてしまったからだ。自然に逆らって排水を促進すれば河川が荒れたり災害が発生し、それを防ぐために砂防事業を行うことになる。さらに、上流での砂防事業は必ず下流に影響を及ぼすことになる。
事業費に見合った効果があるとは思えない(少なくとも事業者は具体的に説明できない)農地の排水事業が、河川の自然を破壊する砂防工事へと繋がっているのだ。アベノミクスによる公共事業を評価する人は、税金がこのように使われていることをきちんと知ってほしい。
十勝川水系河川整備計画[変更](原案)への意見書
ダムで壊される戸蔦別川
集中豪雨による人的被害は防げる
札内川「礫河原」再生事業を受け売りで正当化する報道への疑問
異常気象で危険が増大している首都圏
居辺川の現状(その2)
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Posted by 松田まゆみ at 16:17│Comments(0)
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