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2008年12月21日
ショートカットの愚行
20日の北海道新聞十勝版に、「相生中島の新水路着工へ」という記事が掲載されていました。十勝川の相生中島地区は河道が狭く湾曲していて洪水時に水が速やかに流れず水害を引き起こす可能性があるので、洪水時にのみショートカット(直線化)した水路に水を流すというものです。総事業費は20~30億円で、工期は3年程度とのことです。
この計画策定にあたって、河川管理者である帯広開発建設部は新聞広告などで市民を公募し、専門家なども交えたワークショップを開いて検討を進めてきました。
このように書くと、いかにも住民参加による治水対策かのように感じますが、実態はとてもそのようには思えないものです。以下のサイトにワークショップの報告書があります。
十勝川相生中島地区川づくりWSとりまとめ
そもそもなぜこの地域で十勝川が蛇行しているのでしょうか? ここに掲載されている図を見ていただければわかりますが、相生中島地区の下流右岸で札内川が合流しています。流速が速く大量の礫を運ぶ札内川は、十勝川との合流点で流速を落とし、そこに大量の礫を堆積させたのです。そのために十勝川は大きく蛇行せざるをえませんでした。十勝川は札内川の合流により、自然の摂理で蛇行しているということです。
地図を見ていただけるとわかりますが、札内川の左岸には帯広川が流れこんでいます。実は帯広川は本来、札内川ではなく十勝川に注いでいました。なぜなら、札内川は十勝川との合流によって左岸に大量の礫を運ぶので、帯広川は物理的に合流できないのです。ところが開発建設部は治水の名目で水路を掘削し、無理やり札内川に合流させてしまったのです。
その結果どうなったでしょうか? 札内川が運ぶ礫によって合流点は河口閉塞を起こしたのです。合流点に造られた「親水公園」は「浸水公園」となって水質も悪化しました。
十勝自然保護協会は、開建に対して帯広川を札内川につなげたのは誤りであったことを指摘し反省を求めたのですが、開建は決してその誤りを認めようとしませんでした。ここで誤りを認めてしまったなら、相生中島地区のショートカット計画にも影響してくるでしょう。ともに自然の摂理に反する治水なのですから。
そこでどうしたかというと、「NPO法人 十勝多自然ネット」という団体が新たな迂回水路の掘削を提案しました。以下のサイトをご覧ください。
http://homepage2.nifty.com/near-nature-net/park.html
しかし、いくら迂回水路をつくったところで、札内川による砂利の運搬が止まるわけではありません。結局、帯広川の水をスムースに流すために、砂利を除去するなどの作業を永遠にしなければならないでしょう。この多自然ネットというのは地元の建設業者などによって組織されている団体です。要するに開発建設部の取引先です。帯広開発建設部は明らかに間違った河川改修をし、その対応策として多自然ネットが自分たちの仕事づくりを提案したといえます。
話しを本論に戻しましょう。確かに川が蛇行する部分では流速が落ちますが、それを早く下流に流そうとしてショートカットしたらどうなるでしょうか? 下流部の水位が速く上昇し、河口部などで水害が生じやすくなります。ショートカットによる治水はとっくに破綻しているのに、なおもこだわり続けているのが開発建設部なのです。自然の摂理に反したショートカットは、どこかで歪みがでてくるのではないでしょうか。
住民参加によるワークショップが欺瞞であるというのは、このような蛇行の理由やショートカットの問題がきちんと説明・検討されたと思えないからです。ショートカットを前提に、中島地区の自然環境をどうするかということばかりに目を向けた話合いが行なわれてきたといえます。
釧路川では自然再生を看板に掲げて直線化した河川の蛇行化をし、十勝川では逆に直線化をするというのです。私たちは、こうした国の欺瞞こそ見抜かなければならないでしょう。
この計画策定にあたって、河川管理者である帯広開発建設部は新聞広告などで市民を公募し、専門家なども交えたワークショップを開いて検討を進めてきました。
このように書くと、いかにも住民参加による治水対策かのように感じますが、実態はとてもそのようには思えないものです。以下のサイトにワークショップの報告書があります。
十勝川相生中島地区川づくりWSとりまとめ
そもそもなぜこの地域で十勝川が蛇行しているのでしょうか? ここに掲載されている図を見ていただければわかりますが、相生中島地区の下流右岸で札内川が合流しています。流速が速く大量の礫を運ぶ札内川は、十勝川との合流点で流速を落とし、そこに大量の礫を堆積させたのです。そのために十勝川は大きく蛇行せざるをえませんでした。十勝川は札内川の合流により、自然の摂理で蛇行しているということです。
地図を見ていただけるとわかりますが、札内川の左岸には帯広川が流れこんでいます。実は帯広川は本来、札内川ではなく十勝川に注いでいました。なぜなら、札内川は十勝川との合流によって左岸に大量の礫を運ぶので、帯広川は物理的に合流できないのです。ところが開発建設部は治水の名目で水路を掘削し、無理やり札内川に合流させてしまったのです。
その結果どうなったでしょうか? 札内川が運ぶ礫によって合流点は河口閉塞を起こしたのです。合流点に造られた「親水公園」は「浸水公園」となって水質も悪化しました。
十勝自然保護協会は、開建に対して帯広川を札内川につなげたのは誤りであったことを指摘し反省を求めたのですが、開建は決してその誤りを認めようとしませんでした。ここで誤りを認めてしまったなら、相生中島地区のショートカット計画にも影響してくるでしょう。ともに自然の摂理に反する治水なのですから。
そこでどうしたかというと、「NPO法人 十勝多自然ネット」という団体が新たな迂回水路の掘削を提案しました。以下のサイトをご覧ください。
http://homepage2.nifty.com/near-nature-net/park.html
しかし、いくら迂回水路をつくったところで、札内川による砂利の運搬が止まるわけではありません。結局、帯広川の水をスムースに流すために、砂利を除去するなどの作業を永遠にしなければならないでしょう。この多自然ネットというのは地元の建設業者などによって組織されている団体です。要するに開発建設部の取引先です。帯広開発建設部は明らかに間違った河川改修をし、その対応策として多自然ネットが自分たちの仕事づくりを提案したといえます。
話しを本論に戻しましょう。確かに川が蛇行する部分では流速が落ちますが、それを早く下流に流そうとしてショートカットしたらどうなるでしょうか? 下流部の水位が速く上昇し、河口部などで水害が生じやすくなります。ショートカットによる治水はとっくに破綻しているのに、なおもこだわり続けているのが開発建設部なのです。自然の摂理に反したショートカットは、どこかで歪みがでてくるのではないでしょうか。
住民参加によるワークショップが欺瞞であるというのは、このような蛇行の理由やショートカットの問題がきちんと説明・検討されたと思えないからです。ショートカットを前提に、中島地区の自然環境をどうするかということばかりに目を向けた話合いが行なわれてきたといえます。
釧路川では自然再生を看板に掲げて直線化した河川の蛇行化をし、十勝川では逆に直線化をするというのです。私たちは、こうした国の欺瞞こそ見抜かなければならないでしょう。
十勝川水系河川整備計画[変更](原案)への意見書
ダムで壊される戸蔦別川
集中豪雨による人的被害は防げる
札内川「礫河原」再生事業を受け売りで正当化する報道への疑問
異常気象で危険が増大している首都圏
居辺川の現状(その2)
ダムで壊される戸蔦別川
集中豪雨による人的被害は防げる
札内川「礫河原」再生事業を受け売りで正当化する報道への疑問
異常気象で危険が増大している首都圏
居辺川の現状(その2)
Posted by 松田まゆみ at 11:02│Comments(7)
│河川・ダム
この記事へのコメント
松田さん、ここら辺は私的に調べた事がありますが、
若い頃は極めて良好だった水質ががた落ちになっていました.
あの合流点の不可解はそういう原因があったのですね.
水質の変化は食物連鎖にも影響しますから水棲生物から鳥まで
不健全な摂取をしいられ、生態系の変化、産卵数の減少にも響いてくる
でしょうね. 札内ダムの件もありますから川自体に自浄する力は残っていない気がします. あれほど美しかった十勝の自然が変わり果てていくのを
見たときは胸が痛みました.不合理に堆積したものが下流に動かされば
河口流域は有機物の溜り場になってしまいそうです.
税金が還流する組織にnpo認可が 降りるしくみは頂けませんね.
ゴヨウでない地域研究者が工事評価できるしくみがないのもなさけないです.
雇用者の生活は大切ですから 開建が脳みその入れ替えをしてくれるといいんですが 納税者全員の利益となる事業を促進するのが開建の役割であると思います.
若い頃は極めて良好だった水質ががた落ちになっていました.
あの合流点の不可解はそういう原因があったのですね.
水質の変化は食物連鎖にも影響しますから水棲生物から鳥まで
不健全な摂取をしいられ、生態系の変化、産卵数の減少にも響いてくる
でしょうね. 札内ダムの件もありますから川自体に自浄する力は残っていない気がします. あれほど美しかった十勝の自然が変わり果てていくのを
見たときは胸が痛みました.不合理に堆積したものが下流に動かされば
河口流域は有機物の溜り場になってしまいそうです.
税金が還流する組織にnpo認可が 降りるしくみは頂けませんね.
ゴヨウでない地域研究者が工事評価できるしくみがないのもなさけないです.
雇用者の生活は大切ですから 開建が脳みその入れ替えをしてくれるといいんですが 納税者全員の利益となる事業を促進するのが開建の役割であると思います.
Posted by こるとれーんtone at 2008年12月21日 23:39
松田さん。はじめまして、こんにちは(^^
標津川の記事も読ませていただきましたが、開発局をはじめ国の建設行政はいつまでこのような事を続けるのでしょう。
千歳川放水路や日高横断道が中止になり少しは変わったとか思いましたが、基本的な考え方はまったく変わっていないようですね。
開発局不用論がこれだけ言われているのに、納税者の方を向かない開発局を潰すには、北海道内で行われている各開建の事業を私たちがもっと真剣に考えなければいけませんね。
これからも読者にさせていただこうと思います。
標津川の記事も読ませていただきましたが、開発局をはじめ国の建設行政はいつまでこのような事を続けるのでしょう。
千歳川放水路や日高横断道が中止になり少しは変わったとか思いましたが、基本的な考え方はまったく変わっていないようですね。
開発局不用論がこれだけ言われているのに、納税者の方を向かない開発局を潰すには、北海道内で行われている各開建の事業を私たちがもっと真剣に考えなければいけませんね。
これからも読者にさせていただこうと思います。
Posted by BEM at 2008年12月22日 00:59
こるとれーんtone様
札内川と帯広川の合流点につくられた「親水公園」が「浸水」していると聞いて現場を見に行ったことがあります。
当初、開発局は「多自然ネット」の提案を受けて、札内川から親水公園の上流側にパイプで水を取り入れることで、親水公園の水質を改善しようとしていました。でも、現場を見たら砂利によって帯広川が河口閉塞を起こして水位が高くなっているのですから、それではどうにもなりません。「多自然ネット」は河口閉塞をきちんと把握していなかったのでしょう。そのことを開建に指摘したところ、下流への迂回水路の掘削に変えたのです。
親水公園の横はカヌーの発着場になっていますが、現場を見にいった時にカヌーをしに来ていた人がいました。どこでカヌーを楽しむのかと見ていると、札内川ではなくて帯広川をさかのぼっていきました。よくよく観察してみると、帯広川の河口に砂利がたまっているので帯広川に開いているカヌー乗り場からは札内川には出られないのです。また、札内川の上流からカヌーで下ってきたとしても、ここのカヌー乗り場に乗り入れることはできそうにありません。頭で考えただけのカヌー発着場なのでしょう。
こんな風にして人間の都合で川をいじってばかりいると、本来の川の生態系が変えられて川が死んでしまうように思います。
BEM様
こんにちは。ご訪問ありがとうございます。
国も北海道も無駄な公共事業ばかりに巨額な税金を投入しています。ダム問題も治水対策も、川全体のことを考えているとは思えません。単なる仕事づくりとしか思えないものばかりです。
雇用の創出のために公共事業の必要性を唱え始める人がいそうですが、ワークシェアリングをして労働格差をなくすとか、食糧自給率を高めるために農業従事者を増やすべきだと思います。
札内川と帯広川の合流点につくられた「親水公園」が「浸水」していると聞いて現場を見に行ったことがあります。
当初、開発局は「多自然ネット」の提案を受けて、札内川から親水公園の上流側にパイプで水を取り入れることで、親水公園の水質を改善しようとしていました。でも、現場を見たら砂利によって帯広川が河口閉塞を起こして水位が高くなっているのですから、それではどうにもなりません。「多自然ネット」は河口閉塞をきちんと把握していなかったのでしょう。そのことを開建に指摘したところ、下流への迂回水路の掘削に変えたのです。
親水公園の横はカヌーの発着場になっていますが、現場を見にいった時にカヌーをしに来ていた人がいました。どこでカヌーを楽しむのかと見ていると、札内川ではなくて帯広川をさかのぼっていきました。よくよく観察してみると、帯広川の河口に砂利がたまっているので帯広川に開いているカヌー乗り場からは札内川には出られないのです。また、札内川の上流からカヌーで下ってきたとしても、ここのカヌー乗り場に乗り入れることはできそうにありません。頭で考えただけのカヌー発着場なのでしょう。
こんな風にして人間の都合で川をいじってばかりいると、本来の川の生態系が変えられて川が死んでしまうように思います。
BEM様
こんにちは。ご訪問ありがとうございます。
国も北海道も無駄な公共事業ばかりに巨額な税金を投入しています。ダム問題も治水対策も、川全体のことを考えているとは思えません。単なる仕事づくりとしか思えないものばかりです。
雇用の創出のために公共事業の必要性を唱え始める人がいそうですが、ワークシェアリングをして労働格差をなくすとか、食糧自給率を高めるために農業従事者を増やすべきだと思います。
Posted by 松田まゆみ at 2008年12月22日 13:47
標津川の蛇行復元の、開発側の思惑ははっきり見えてきました。
50億円もの費用は、引堤が40億以上かかることが分かりました。引堤は蛇行と全く関係ありません。蛇行復元に対する注文をつけると、今年度中に引堤だけは着工させてくれというのです。
あなた方言うなら、蛇行復元は少し待ちましょうときました。蛇行復元は、多分1億以下の工事になると思います。開発はお金のかかることは、何とかやりたいのです。
蛇行復元は単なるお題目です。鶏頭を掲げて狗肉を売っているのです。環境保護などおこがましい。今まで破壊したことの反省もなく、新しい事業として復元をやる土建屋発想を隠した事業です。
これにかかわって、魚が好きであちこちで発言しているK氏のような、まったく無責任な世間知らずの人物などは、全く犯罪行為と言われても仕方ない。
開発に協力して生き延びる、こうした自然はのような顔をした人物を取り込むのも、巧妙になったものです。
北方ジャーナルの10月号をご覧ください。
50億円もの費用は、引堤が40億以上かかることが分かりました。引堤は蛇行と全く関係ありません。蛇行復元に対する注文をつけると、今年度中に引堤だけは着工させてくれというのです。
あなた方言うなら、蛇行復元は少し待ちましょうときました。蛇行復元は、多分1億以下の工事になると思います。開発はお金のかかることは、何とかやりたいのです。
蛇行復元は単なるお題目です。鶏頭を掲げて狗肉を売っているのです。環境保護などおこがましい。今まで破壊したことの反省もなく、新しい事業として復元をやる土建屋発想を隠した事業です。
これにかかわって、魚が好きであちこちで発言しているK氏のような、まったく無責任な世間知らずの人物などは、全く犯罪行為と言われても仕方ない。
開発に協力して生き延びる、こうした自然はのような顔をした人物を取り込むのも、巧妙になったものです。
北方ジャーナルの10月号をご覧ください。
Posted by そりゃないよ獣医さん at 2008年12月22日 17:13
そりゃないよ獣医さん様
新聞にも開発局は蛇行復元にはそれほどこだわらないようなことが出ていましたね。それで、蛇行復元は名目にすぎなかったのだと理解しました。
目的は40億以上もかかる引堤だったことは明らかでしょう。自然復元などとはまったくおこがましい話しです。本当に開発局はどこまで市民を騙そうとするのでしょうか。いい加減にしてほしいです。
新聞にも開発局は蛇行復元にはそれほどこだわらないようなことが出ていましたね。それで、蛇行復元は名目にすぎなかったのだと理解しました。
目的は40億以上もかかる引堤だったことは明らかでしょう。自然復元などとはまったくおこがましい話しです。本当に開発局はどこまで市民を騙そうとするのでしょうか。いい加減にしてほしいです。
Posted by 松田まゆみ at 2008年12月22日 20:25
この水路も帯広川の二の舞になるでしょうね。川のことを知らず、金に任せて勝手なことをするのは許せません。工事が目的化した組織は早く消滅してもらうほうが世のため人のためです。それにしても、こんな工事屋に乗せられるお方がいらっしゃるとはお粗末です。
Posted by コアカゲラ at 2008年12月24日 22:36
コアカゲラ様
そうですね。自然の摂理に反する工事をしたなら、どこかにひずみが出るものです。私達はすでにそのようなことをいろいろ経験してきたはずです。川をトータルな自然として捉える必要があります。
そうですね。自然の摂理に反する工事をしたなら、どこかにひずみが出るものです。私達はすでにそのようなことをいろいろ経験してきたはずです。川をトータルな自然として捉える必要があります。
Posted by 松田まゆみ at 2008年12月25日 08:36
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