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鬼蜘蛛の網の片隅から › 河川・ダム › 新生物多様性国家戦略を無視した開発局

2009年05月29日

新生物多様性国家戦略を無視した開発局

 28日の北海道新聞夕刊に「バイオ燃料 ヤナギに注目」という記事が掲載されていました。開発局は、河川敷などに広く自生し生育も早いヤナギからバイオエタノールを抽出する事業を進めているとのこと。昨年7月から旭川市の忠別川でヤナギを採取して実験をしていたが、今年から本格的にエタノールの効果的な抽出方法などを研究するそうです。

 「河畔林は障害物か」で、然別川の河畔林が伐採されたことを書きましたが、豊平川でも河畔林が間引きされスカスカになってしまったところがあるそうです。この伐採はバイオ燃料とは関係していないのでしょうか?

 日本は国際条約である生物多様性条約を締結し、それに基づいて「新生物多様性国家戦略」を作成しました。国はこの国家戦略を遵守しなければなりません。新国家戦略では、「具体的施策の展開」の中に「河川の整備における基本的考え方」が書かれています。その中から重要な部分を引用しましょう。

 「現在、河川の整備、管理に関する計画を策定する際の基本的な考え方をしては、必要とされる治水上の安全性を確保しつつ、生物の良好な生息・生育環境をできるだけ改変しないようにすること、改変せざるを得ない場合においても、最低限の改変にとどめるとともに、良好な河川環境の復元が可能となるよう努めることとしています」

 「また、河川を流れる水については、従来は適切な水質を確保するとともに、正常流量としてある一定の流量を確保することに重点が置かれていましたが、河川環境が洪水による撹乱や流量変動など河川自身がもつ自然のダイナミズムとその環境下で形成される自然環境として特徴付けられることから、一定の流量の確保に加え、どのような流量変動が河川に必要なのかということを考慮することも重要です」


 そして、このような取組を行なう際の主な視点は以下の通りだとしています。

1.その川がもともと有していた多様な河川環境を保全・復元する。
2.連続した環境を確保する。
3.その川らしい生物の生息・生育環境の保全・復元を図る。
4.水の循環を確保する。
5.市民、有識者、関係団体等の理解と協力を得る。


 然別川下流の国見橋付近で行なわれた伐採は、増水時の河畔林の役割をないがしろにし、生態系を破壊しました。また開発局は、十勝自然保護協会にはなにも説明をしていませんから、上記の国家戦略を全面的に無視して伐採を行なったのです。

 河畔林はさまざまな生物を育み、増水時に流速を抑える重要な働きをしているのです。バイオ燃料の生産地として存在しているのではないことを、開発局は認識すべきでしょう。


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Posted by 松田まゆみ at 12:59│Comments(2)河川・ダム
この記事へのコメント
この記事見て思い出したのが、ブッシュがスイッチグラスをバイオエタノールの主役にととか言っていたが、これはとん挫した。
スイッチグラスは、葦のような植物で同じように河原や湿地で生育が早いそうである。
ところがいざ、稼働しようとすると、ほとんどが遠隔地である。運送料がかかってしまう。中が空洞のスイッチグラスは、容積ばかりが嵩んで中身がない。
結局、採算が合わないことが解って、今はだれも言いません。
思いつきの人間が、取り巻きにいたのでしょう。
きっと、スイッチグラスも生えている環境では、何らかの意味がったはずです。
余には、カタワの学者が多すぎます。
Posted by そりゃないよ獣医さん at 2009年05月30日 21:14
獣医様

ヤナギからエタノールを抽出するには、設備や燃料などコストがかかります。それなら、ヤナギの材をそのまま燃料などに利用したほうがよほど効率的でしょう。開発局のこの研究事業には税金が投入されているわけですが、温暖化対策の名の下に、無駄なことばかりやっているように思います。
Posted by 松田まゆみ at 2009年05月30日 22:38
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