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鬼蜘蛛の網の片隅から › 河川・ダム › 開発局の過大な基本高水流量

2009年06月10日

開発局の過大な基本高水流量

 北海道新聞の夕刊の連載「私のなかの歴史」で、北大大学院教授の小野有五氏が取り上げられています。この6月5日付けの記事で、千歳川放水路の根拠とされた「基本高水(たかみず)流量」が過大に算出されていたことが語られています。

 基本高水流量とは、ある降雨量において川にどのくらいの水が流出するかを算出したものです(ダムや遊水地など、洪水を調整する施設がない場合の流量を「基本高水流量」それらの施設によって洪水が調整された場合の流量を「計画高水流量」といいます)。

 千歳川放水路で、どうやって「過大な数値」を出したのかが上述の新聞記事でわかりやすく説明されています。千歳川放水路計画では、3日間の降雨量を260ミリと想定していました。これは史上最大といわれる1981年の3日間で282ミリより少ない雨量です。ところが、基本高水流量は毎秒18000立方メートルと、1981年の12000立方メートルの1.5倍もの数値になっていたのです。なぜ少ない雨量でありながらこのような過大な数値になったかといえば、短時間に猛烈な雨が集中的に降った1975年の降り方のモデルに、3日分の想定雨量をはめ込んで、一気に大量の水が出るパターンを作り出していたということなのです。

 基本高水流量の過大な算出は、もちろん千歳川放水路に限ったことではありません。たとえば、サンルダムの計画されている天塩川では、3日間で233ミリの大雨が降ったときの流量は毎秒4400立方メートルでしたが、予測では3日間で224ミリの大雨で毎秒6400立方メートルの水が流れるという計算になっています。当別川では、3日間で270ミリの大雨が降ったときの流量は毎秒720立方メートルでしたが、予測では3日間で230ミリの大雨で、1350立方メートルの水が流れるという計算になっているのです(2009年3月14日の札幌弁護士会主催によるシンポジウム「川は流れる」の資料より)。開発局の予測は、実績の約1.5倍もの数値になっているのです。

 要するに、現実的とはいえない数値を基本高水流量とし、それを基準に治水計画をつくるというのが国の手法です。数字操作ともいえる過大な流量予測によって、必要のない公共事業をつくりだしているといえましょう。これについては、ダム問題に取り組んでいるジャーナリストのまさのあつこさんのサイトでも指摘されています。

 十勝川の相生中島地区でも、治水対策のもとに巨額の税金を投入して水路の掘削(ショートカット)が行なわれようとしていますが、この事業も過大に算出された高水流量をもとに計画されたのではないかという疑いを私は抱いています。なぜなら、1981年の未曾有の大雨でも帯広市は洪水被害に見舞われなかったのですから。



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Posted by 松田まゆみ at 10:50│Comments(3)河川・ダム
この記事へのコメント
千歳川放水路で示された基本高水は当時、表記ミスかと思わせるもの
であったことを思い出します. コップで足りるだけの水をタライにうつす.
あっというまに乾ききってしまう. しかもタライは値段が高くて壊れやすい.
こんなことを川でやったらどうなるか.
予算の為の水増しと同じように基本高水を表記するなんて .
まともな開発行為ができないのですから
開発という言葉に不信感を持つ人は増えていくのでしょう.

小野有五さんは、こんないばらの道に入ってしまって大変だろうなぁ、と思っていたらバイタリティのある方で、その後も自然を活動に邁進されていく姿は若者にも影響を与えました. 小野有五さんの歩き続ける姿が若者の心を
つかむのでしょうね.

十勝川はどんどん川ではなくなっていきますね. 川という生命を守るのも
血税をあづかる機関の役目である筈ですね.
Posted by こるとれーんtone at 2009年06月11日 18:28
標津川では、1954年の洪水を引き合いに出して、橋が流れ壊れる写真を使っています。木造の今ではほとんど見られない橋が流れる恐怖を訴えています。
洪水による被害人数は、全道で亡くなられた人数を記載しています。
ひどい奴らです。
Posted by そりゃないよ獣医さん at 2009年06月12日 20:22
こるとれーんtone様

小野有五さんの行動があったからこそ、千歳川放水路は止められたのだと思います。あの行動力には頭が下がります。御用学者といわれる方が多いなか、研究者の方は見習ってほしいものです。

獣医様

過去の洪水被害の写真を持ち出したり、洪水のシュミレーションを店つけて不安を煽るようなやり方は姑息ですね。治水計画をたてる際の高水流量について、きちんと納得できる説明すをることの方が先決でしょう。
Posted by 松田まゆみ at 2009年06月13日 17:44
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