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2009年10月14日
根拠不明の治水対策で1600億円
一週間ほど前のことになりますが、8日に音更町で十勝川水系河川整備計画(原案)の説明会があったので参加しました。この原案は北海道開発局帯広開発建設部が、今後30年間の河川整備計画についてまとめたもので、原案縦覧・説明会、意見募集、公聴会を経て計画を策定することになっています。
参加者には100ページの説明と29ページの附図からなる分厚い資料が配布されました。これはインターネットでも公開されていますが、全部読んで理解するのはなかなか大変な資料です。その分厚い資料の説明がスライドを用いて45分ほどで行われたのですから、もちろん駆け足で概要の説明をすることしかできません。
ところで、河川の整備計画といっても、その中身は治水が中心です。十勝川水系の場合、新たにダムを造るのではなく、堤防の整備や河道の掘削で対応するというわけです。9月10日の北海道新聞によると、堤防整備に約230億円、河道の掘削に約860億円、堤防の保護対策に150億円、その他(広域防災対策や耐震対策など)に約360億円で、合計約1600億円が見込まれているそうです。
十勝川では、洪水のときに速やかに水を流すという目的で、千代田新水路が平成19年に完成したほか、現在同様の水路を相生中島地区に建設しています。相生中島の水路については、十勝自然保護協会は帯広開建に「現在の流路でどれほどの降雨量があると洪水を起こすのか、そしてそれはどれほどの確率か」ということを質問したのですが、これについて数値を示して説明することはありませんでした(「十勝川水路工事で再質問書を送付」参照)。直線化が必要であるという根拠も示さないまま直線化の工事をし、これらの工事が終わったあともまだ洪水時に十分な流量が確保できないところがあるとして、堤防の整備や河道の掘削などに1600億円もの税金をつぎ込むというのです。
十勝川水系では昭和56年に数百年に一度といわれる大雨が降ったのですが、このときの帯広地点での流量は4952立方メートルです。これだけの水が流下しても堤防から水が溢れることはありませんでした。今回の原案では、帯広地点での河道への分配流量は4300立方メートルとしています。過去に4952立方メートルの水が流れているのですから、4300立方メートルの流量はすでに確保できています。ところが、今回の原案では帯広地点でさらに掘削工事が必要だとしているのです。説明が破綻しているとしか思えません。
説明の後の質問時間にも、治水対策の根拠となるピーク流量の設定についての質問が出されました。ところが、帯広開建は具体的な数値を示すことができず、曖昧な回答に終始しました。
帯広開建の意味不明なやり方でいくなら、永遠に堤防のかさ上げや掘削工事を続けることができるのではないでしょうか。これでは治水のための整備ではなく、工事のための整備です。治水の根拠となる数値を具体的に説明できない限り、整備計画原案を認めることにはならないでしょう。
十勝川水系河川整備計画[変更](原案)への意見書
ダムで壊される戸蔦別川
集中豪雨による人的被害は防げる
札内川「礫河原」再生事業を受け売りで正当化する報道への疑問
異常気象で危険が増大している首都圏
居辺川の現状(その2)
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Posted by 松田まゆみ at 15:57│Comments(5)
│河川・ダム
この記事へのコメント
私も十勝川水系河川整備計画原案に目を通しました。
過大な洪水流量(基本高水のピーク流量)を設定し、安全に流下させるためと称して、不要不急な公共土木工事をえんえんと進めている構図が見えてきました。
税金で安全確保をするというなら、どれほど危険かを納税者にきちんと説明しなければなりませんが、この原案にはそんな説明はありません。
「洪水、洪水」と叫んでいる様は、オオカミ少年ならぬ「洪水おじさん」とでも呼びたくなります。
今回、十勝川水系河川整備計画原案という僅かな情報開示ですが、洪水おじさんの本質を垣間見ることができたという意味で、収穫といえそうです。
なにはともあれ、公共土木事業パラサイトの駆除をしていかなければなりませんね。
過大な洪水流量(基本高水のピーク流量)を設定し、安全に流下させるためと称して、不要不急な公共土木工事をえんえんと進めている構図が見えてきました。
税金で安全確保をするというなら、どれほど危険かを納税者にきちんと説明しなければなりませんが、この原案にはそんな説明はありません。
「洪水、洪水」と叫んでいる様は、オオカミ少年ならぬ「洪水おじさん」とでも呼びたくなります。
今回、十勝川水系河川整備計画原案という僅かな情報開示ですが、洪水おじさんの本質を垣間見ることができたという意味で、収穫といえそうです。
なにはともあれ、公共土木事業パラサイトの駆除をしていかなければなりませんね。
Posted by ミユビゲラ at 2009年10月15日 05:10
30年後までの河川整備計画が 災害の起きていない地にあるという
こと事態が 不可解!! こんなことが認められるなら北海道の 政治はこの後も終わりです.
高橋はるみ知事は この組織の曖昧な回答、説明の付かない失敗事業、談合に対しなんの違和感も発しないですね!!
知事は 世界へ発信する北の自然の価値なんてtvで言ってましたが どこでそんな自然が守られているのか? なにかあると道職員のボーナスを削減する、道民サービスを縮小する等という安易なめくらまししかしていないようですが.
知床の世界自然遺産は ハコモノづけにした以降、生態系や漁師の
生活にはなんの改善策も すすめようとしません.
そこに方向性というものがあるでしょうか.
農業、漁業、自然、雇用のバランスの方向性が まったく見えない政治はいつまで続くのでしょうか.
こと事態が 不可解!! こんなことが認められるなら北海道の 政治はこの後も終わりです.
高橋はるみ知事は この組織の曖昧な回答、説明の付かない失敗事業、談合に対しなんの違和感も発しないですね!!
知事は 世界へ発信する北の自然の価値なんてtvで言ってましたが どこでそんな自然が守られているのか? なにかあると道職員のボーナスを削減する、道民サービスを縮小する等という安易なめくらまししかしていないようですが.
知床の世界自然遺産は ハコモノづけにした以降、生態系や漁師の
生活にはなんの改善策も すすめようとしません.
そこに方向性というものがあるでしょうか.
農業、漁業、自然、雇用のバランスの方向性が まったく見えない政治はいつまで続くのでしょうか.
Posted by こるとれーんtone at 2009年10月16日 21:20
ミユビゲラ様
分厚い資料ですが、じっくり読むと設定している流量の根拠がよくわからないですよね。肝心な治水の根拠がわからないような計画案って何なのでしょうか。
こるとれーんtone様
十勝川の基本高水流量や計画高水流量についても、その算出根拠がさっぱりわかりませんし、どう考えても非常に過大な数値としか思えません。開発局は、これまでこういうことを追及されなかったのをいいことに、矛盾した流量を設定し、必要のない工事をいつまでも続けたいのでしょう。これ以上、無駄な工事で川をいじって欲しくないですね。
分厚い資料ですが、じっくり読むと設定している流量の根拠がよくわからないですよね。肝心な治水の根拠がわからないような計画案って何なのでしょうか。
こるとれーんtone様
十勝川の基本高水流量や計画高水流量についても、その算出根拠がさっぱりわかりませんし、どう考えても非常に過大な数値としか思えません。開発局は、これまでこういうことを追及されなかったのをいいことに、矛盾した流量を設定し、必要のない工事をいつまでも続けたいのでしょう。これ以上、無駄な工事で川をいじって欲しくないですね。
Posted by 松田まゆみ at 2009年10月17日 14:17
思い出せば20年前、河川の流量計算を計算に何十分もかかるような、まだ古〜〜いコンピューターでさせられたことがあります。
河川の素人の自分がこんなことやっていいのかなあ(^^; なんて思いつつ、◯年規模の雨で計算したり、どの程度までなら氾濫しないかとかやっていたような覚えがあります。
しかしあくまでも机上の計算です。
どのように雨が降るかなんて分からないですよねえ。
治水を必要でしょうが、毎年本州で起きている水害を見るとまったく役に立っていないのでは?と思ってしまいます。
記事の工事の予算は合計1600億円ですか。
これはまだ計画なんでしょうか? 工事自体もそうですが、この金額もしっかり我々が見直せると多分こんな巨額にはならないんじゃないでしょうか。
河川の素人の自分がこんなことやっていいのかなあ(^^; なんて思いつつ、◯年規模の雨で計算したり、どの程度までなら氾濫しないかとかやっていたような覚えがあります。
しかしあくまでも机上の計算です。
どのように雨が降るかなんて分からないですよねえ。
治水を必要でしょうが、毎年本州で起きている水害を見るとまったく役に立っていないのでは?と思ってしまいます。
記事の工事の予算は合計1600億円ですか。
これはまだ計画なんでしょうか? 工事自体もそうですが、この金額もしっかり我々が見直せると多分こんな巨額にはならないんじゃないでしょうか。
Posted by BEM at 2009年10月18日 02:06
BEM様
十勝川水系の場合、治水計画を立てる際には、150年に一度の降雨確率と時間当たりの降水量を計算式に入れて計算しているようです。150年に一度の大雨が短時間に集中的に降ったと仮定して計算することで、実際にはほとんどありえないような雨の降り方を机上で作り出すことができるのです。それが、過大な治水対策をする根拠になっています。
おっしゃる通り、どのように雨が降るかなんてわかりません。たとえば「1000年に一度の大雨にも対処」などといったらきりがないのです。もし想定外の大雨が降って堤防から水が溢れたなら、流域住民は避難するしかないでしょう。どのような大雨までを想定し、どこまで整備で対応すべきなのかを、もっときちんと議論すべきです。
今回の十勝川の整備計画はまだ原案の段階ですが、地域住民からの意見募集と公聴会を経て確定されることになります。
十勝川水系の場合、治水計画を立てる際には、150年に一度の降雨確率と時間当たりの降水量を計算式に入れて計算しているようです。150年に一度の大雨が短時間に集中的に降ったと仮定して計算することで、実際にはほとんどありえないような雨の降り方を机上で作り出すことができるのです。それが、過大な治水対策をする根拠になっています。
おっしゃる通り、どのように雨が降るかなんてわかりません。たとえば「1000年に一度の大雨にも対処」などといったらきりがないのです。もし想定外の大雨が降って堤防から水が溢れたなら、流域住民は避難するしかないでしょう。どのような大雨までを想定し、どこまで整備で対応すべきなのかを、もっときちんと議論すべきです。
今回の十勝川の整備計画はまだ原案の段階ですが、地域住民からの意見募集と公聴会を経て確定されることになります。
Posted by 松田まゆみ at 2009年10月18日 10:04
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